繁盛旅館への道

株式会社旅行新聞新社 発行の「旬刊 旅行新聞」にてコラム連載中!
弊社代表取締役の大坪敬史が、~売れる企画商品のツクリカタ~というテーマで執筆しております。

団体旅行から個人旅行へのシフトと言われ続け、宿の集客スキームが旅行会社重視から直販&インターネット販売重視に変動しています。その中で、当然お客様に販売する旅館の「商品」も変化していることは確かです。

もはや以前のように「1泊2食和室で○○○○○円」という商品は、よほど宿のブランド力がない限り売れません。お客様に宿の魅力を伝える企画商品を造成しなければならないのです。 ただ、宿の企画商品を造成しないまま、ネット販売の様々な手法(SEO、SEMなど)ばかりに頼り、結局売上が伸びても利益が追いつかないというケースも、日々のコンサルティング活動においてよく散見します。最近はfacebookさえやっていればなんとかなる!というおかしな風潮も重なり、本来一番力を入れるべき、宿の「商品化」がなおざりになっています。

ネットで売る、旅行会社で売る、直販で売る、という前段階で、お客様に「自分達の宿が何を提供できるか」を明確にした企画商品を造成することが必要なのです。宿内部の料理、温泉、接客などの“おもてなし”に力を入れることは当然必要ですが、宿の“おもてなし”を体現させ、お客様に伝えていくことが求められているのです。数々の販売強化手法はありますが、そんな時代だからこそ「商品力の再考」が求められているのです。そんな商品力を強化した事例を、これから皆様にご紹介していきたいと考えてりおります。

お手伝いさせていただいたクライアント様 成功事例のご紹介

2017年9月11日 旅館の1泊2食は悪なのか?

 日本の観光を、観光業界以外の方が批判的にとらえる事象として、旅館の「1泊2食のスタイルが悪い」というのがあります。グローバルスタンダードは泊食分離で、そのスタイルに慣れたお客様にとって、日本の宿泊スタイルはなじまない、ということのようです。 
  
 ある有名温泉地にあるクライアント旅館では、特定の部屋を1泊朝食付きで販売していました。他の1泊2食プランより安いということで、売れ行きは好調でした。ところが最近、流れが変わってきたのか、1泊2食付プランの方が先に売れ、1泊朝食付きプランが売れ残ってしまうことが多くなっています。 
  
 要因としては1点目が、この温泉地も人手不足の流れにあり、今まで1泊2食を主に売っていた旅館が、1泊朝食付きプランを人手がかからない(夕食を出すスタッフがいない)ので積極的に売り出したこと。 
  
 2点目は、1泊朝食付きプランで宿泊申し込みをしても、この温泉地に夕食を食べる店がそれほどなく、宿泊客にとっての楽しみがない。 
  
 3点目が、マーケットのニーズ以上に1泊朝食付きプランが売れてしまい、想定しているお客様(アウトドアやカップル旅行)以上に、プラン(部屋)が出ているので売れ残ってしまう。この3点が理由として考えられます。 
  
 都会のど真ん中で1泊朝食付きプランを売れば、このようなことにはならず、宿泊先以外に娯楽(ショッピング、飲食、エンターテイメントなど)があり、観光として成り立ちます。 
  
 しかし、温泉地として考えたときには、娯楽の要素が組み込まれた温泉地は全国的にもそれほどありません。また、インバウンドのお客様にも、地方の温泉地に1泊朝食付きで泊っても、夕食を食べることができる場所が少ない、ということが分かってきているのが、1泊朝食付きプランが売れなくなった要因でしょう。 
  
 ただ、この事例は特定地域の話であり、地域全体で「泊」・「食」・「観光」に取り組んでいるエリアは別です。しかし、地域全体でそういう取り組みを出来ていない現状もあります。 
  
 一方で、インバウンドに取り組むなかで、外資系OTAの担当者から「1泊朝食付きプランを出さないと、インバウンド客はとれません」と断言された旅館もありました。その旅館では「1泊朝食付きをたくさん販売しても、そういう経営体制になっていないので、1泊2食しか売らない」と断り、結果として1泊2食のお客様が大量に泊るようになり、大成功を納めたという事例もあります。 
  
 マーチャンダイジング施策の一環として、1泊朝食付きプランを販売し、価格帯に幅を設けるということはありますが、「売りやすいから」といって安易に販売を続けると、思わぬしっぺ返しにあうでしょう。 
  
 バランスの取れた施策を考えなければいけない「時期」が、今なのでしょう。

2017.9

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2017年7月11日 観光地で面の展開をするには

北海道知床の「しれとこ村」グループは世界自然遺産の宿「しれとこ村」、国民宿舎 桂田、知床遊覧船という3社を世界自然遺産地域「知床」で経営しています。こちらの経営者は、自分たちだけが良くても観光地としてはダメだ!というお考えのもと、宿を基軸として関連アクティビティ業者の皆様と協力した宿泊プランなどを販売しておられます。
 
観光とは「国の光を観る」という語源の通り、「光」と「見る」という言葉に分けることができます。多くの人が「光」(魅力)を磨くことばかりに注力され、「見る」(見てもらう)ということはあまり注力されることが少ない時代が続きました。つまり、良いこと(光)を強化していれば、勝手にお客様が「見て」くれるという発想でマーケティングの概念が欠如していたことが観光地の衰退の要因です。
 
確かに、一部強烈な観光コンテンツを磨いておけば良い…という事例もあるでしょうが、今の時代はそれだけでお客様が集まるほど甘い時代ではありません。魅力(光)を知ってもらうための行動も、魅力を磨くと同時に重要なことです。
 
しれとこ村のビジネスモデルは「宿」で「宿+アクティビティ」を提案する、「遊覧船」で「宿+アクティビティ」を提案するというクロスモデルになっています。それをインターネットの世界で強化したことが成功のポイントです。各社のサイトに「知床遊覧船、しれとこ村、国民宿舎桂田はしれとこ村グループのため、グループ企業 ご利用特典としてお安く提供しています」という理由が明確に提示されているため、お客様に安心感が伝わります。
 
宿という存在は「人」を当該地域にいざなう存在であると同時に、そこで滞在し地域の経済に貢献する役割も担っています。知床に観光客が来たら、飲食店で食事をするでしょうし、お土産も買うでしょう。当然、アクティビティも行うものと思います。1ヶ月に1度、知床を訪問している私でさえ、時間があれば〇×も見てみたいな~、今の時期の▲■はどうだろう?と後ろ髪をひかれながらいつも帰っています。
 
本来であれば、「点」(宿や飲食店を個別に訪問する)の観光だけでなく、「面」(あらかじめ、地元の人が素晴らしいと思うスポットを繋いでPRする)の展開も重要なはずですが、そこに力を入れているケースは少ない状況です。「面」の観光を促すために観光協会や地域組合が存在しているはずですが、それがうまく機能しきっているケースは少ないのが現状です。ただ、どうせダメだから…と放っておけば、地域として衰退していきます。
 
自社の魅力を磨くことは当然大切ですが、そればかりに注力するのではなく「地域」や、「何に魅力を感じこの地域にお客様が来ているのか」という発想に立っての経営や企画立案も求められているのではないでしょうか?皆様の地域においても、「面」での活動がますます活発になることを願っております。

2017.7

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2017年5月11日 歴史のチカラを商品に

 新潟県岩室温泉の「富士屋」が2018年に創業150年、姉妹館の「ゆめや」が同じく開業30年を迎えられます。
 
■ 富士屋公式HP http://www.hotel-fujiya.co.jp
■ ゆめや公式HP http://www.hotel-fujiya.co.jp

本年4月に自家源泉開湯5周年を迎えられ、来年が節目の年ということで、今からプレイベント的な企画をいくつも揃えておられます。

 まず富士屋では、【富士屋創業150周年先行企画】として、『明治・大正・昭和時代の富士屋写真』持参で富士屋オリジナル温泉手ぬぐいプレゼント!【懐かしの富士屋★思い出プラン】という宿泊プランを造成いただきました。
 
 内容は、お客様が明治・大正・昭和時代の富士屋においでの時のお写真をお持ちいただき、富士屋でスキャナでデータを取らせていただくお礼に「富士屋オリジナル温泉手ぬぐい」をプレゼントするという企画です。味のある昔の時代のパンフレットが保管されておりましたので、そちらをスキャンしプラン画像に使い、レトロ感を演出しました。
 
 また、ゆめやでは 【ゆめや創業30周年プレ企画】として【ゆめや創業30周年プレ企画】新旧料理長競演プランという宿泊プランを造成いただきました。
 
 初代料理長が「料理の鉄人」にも出演し、ゆめやのおもてなしの一旦を支えていただいておられ、その後、弟子の現料理長に引き継がれておられます。そして、30周年を迎えるにあたり、新旧料理長が競演する献立を月替わりでご提供させていただく、というものです。
 
 30年という年月で料理長が2人しかいない、しかも初代の技術が次代の料理長に継承されている、ということに対して「素晴らしい!」の一言です。
 
 やはり良い旅館様は、良い料理人がいらっしゃり、その技術を旅館として継承しているということをと強く実感いたしました。
 
 こういった企画をどんどん作成し、2018年に向けて加速していただく予定ですが、先行してHPやFacebookにアップすると早速お馴染様から反応があり、ゆめやの本プランに至っては作成し、HPに掲載したその日にご予約をいただきました。
 
 このような「歴史」に基づいた企画は、新興の金ぴか設備投資だけが売りのホテル形式旅館や、再生の名のもとに展開するバイキング旅館では企画しようがありません。(そんな旅館はそもそも、人に語れるような歴史はありません)。
 
 旅館という存在を軸にして、何代もそこで関ってきた人々の努力の結果として「創業150年」につながったのでしょう。
 
 皆様の働かれている企業においても、何かしらの周年(区切り)があれば、ぜひ表に出していただき、企業とお客様、企業と従業員などのつながりを強化していただければ、必ず良い反応が生まれることと確信しております。

2017.5

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2017年3月11日 キャンセルポリシーの見直し


弊社クライアントの1月の宿泊指標を分析したとき、特徴的だったのが正月期間の直前キャンセルのため、正月期間にも関らず、部屋が空いていたケースがあったということです。こられの施設に、12月訪問した際は「すでに正月期間の予約は埋まっているので安心ですね」という話をしておりました。
 
 それが、キャンセル料が発生する直前にキャンセルされたケースは想定以上に多く、今回のような結果になってしまいました。もちろん、某旅行会社のように実際のお客様もいない中、ブロック客室に対して、架空の人物による架空予約を繰り返し、結果的に部屋を売り切れない、というケースもあります。
 
 このような悪質な予約形態が一般客に伝播したということではないでしょうが、一般の個人ユーザーの中にも、同じ日に違う旅館を何軒も予約し、直前にキャンセルするという消費行動が目立つようになってきました。
 
 観光地として知名度が高く、予約制限を厳しくしても、繁忙時期なら部屋が埋まりきる、と確信が持てる地域のクライアントには、正月などの繁忙時期に「カード決済限定&予約」した段階で、キャンセル料が100%かかるプラン設計を造成してもらい、確実に泊まれるお客様を確定し、「おもてなし」に注力する体制を構築してもらっています。
 
 宿としては、キャンセル料を徴収することが目的ではありません。ただ、常識を逸したNG客のために、本当にその宿に泊りたいお客様の部屋が無くなってしまうのを回避することこそが大切なのです。
 
 この事案以外にも、「最近直前キャンセルが多くて困っているんです」という話があるクライアント地域の他旅館をリサーチしていると、キャンセルポリシーが以前よりもしっかりと記載されている事案がありました。キャンセルポリシーが緩いがために、旅館にとって好ましくない行為を繰り返すお客様が集まってしまっていたのです。
 
 キャンセルポリシーを厳しくしすぎると、お客様が減ってしまうのではないか、という恐怖は十分に理解できます。マーケットに対して、自館の優位性がどれほどあるのかを考慮しつつ、キャンセルポリシーを強化していかなければなりませんが、繁忙時期など、確実にお客様が泊る時期は「本当に自館に泊まりたい、というお客様が泊れない」という事態が発生しているケースが想定されます。老神温泉の仙郷では、キャンセルポリシーを「通常期」と「特定期」に分け、公式サイトにも次のように明確に記載しています。
 ※通常:8日以前はキャンセル料は発生いたしません。※特定日 (GW、お盆、年末年始、3日以上の連休日):15日以前はキャンセル料は発生いたしません。(http://www.senkyou.jp/cancel/ よりの転載)
 
 宿が一方的に泣き寝入りをする体質改善のためにも、今一度、キャンセルポリシーを見直されることをお勧めいたします。

2017.3

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2017年1月11日 リアルエージェントとの付き合い方

先日、あるクライアント旅館の社長から「JTBからいきなり電話があって、来年度からエースパンフレットに掲載できません、と言われてしまいました」という連絡をいただきました。こちらの旅館は一休(キラリトではありません)やじゃらんハイクラス、楽天プレミアムに掲載されているようなハイクオリティーな旅館です。ただ、20室規模の旅館でJTBの値下げ圧力には屈せず、毎年単価を上げる(タリフの料金を上げる)操作をしていただいておりました。

さらにJTBからの一方的な要求にも屈せず、旅館として一本筋をもって経営されてきたので、今回のような事案に発展したものと思われます。

ひと昔前なら「それはマズイですね。何とかパンフレットに残るように働きかけをしましょう」と回答したかもしれませんが、今回は「良かったですね。これで自由に販売できるようになりましたね」とお伝えしました。すると、社長も明るい声で「そうなんですよ。JTBからは電話で○月×日に伺って、前向きな話をさせてもらいたいといわれました」とのことでした。

パンフレット掲載がなくなった時点で、「前向き」でもありませんが、最大限の譲歩で「部屋のブロックではなく、発生手配でお付き合いを続ける」といった程度のものでしょう。

そもそも、この旅館では「インターネットや直販で売れる体制を構築しているので、もうリアルエージェントはいらない。でも、先代からの流れもあるので、旅館側から契約を切ることは躊躇していました」という話でした。ですから、今回の話は経営にはプラスにしか働きません。

この旅館のみならず、たの旅館からも「リアルエージェントとの付き合いはどうしていけばよいでしょう」と質問を受けます。その場合、数字上で判断することをオススメしております。計算式は、在庫提供数×104日(365日×2/7)×同伴係数×客単価で求められた数値と、実際に年間を通じて売れた金額の差異で判断します。※同伴係数:1室に何人泊るか、ということ。多くは2.0人※104日:年間365日のうち、土曜日(1/7)とその他休前日(1/7)が100%埋まったと仮定しての数値。今回のケースではJTBに在庫を3室提供しているので、3在庫×104日×2.0×21,600円=約1347万円となりました。
 
今回ケースでは、この計算式結果と年間の実際のJTB経由の売り上げがほぼイコールになったことです。つまり、JTBを使わなくとも、自力でこの程度の在庫は売り切れる。これで、1347万円が手数料なし(安く)に、売れる土壌ができ、万々歳の結果です。
 
中途半端にリアルエージェント経由の売り上げがあり、契約解除に踏み切れない方は、この計算式でリアルエージェントの貢献度を検証し、自館に最適なマーケティングチャネルの構築をオススメします。  
 

2017.1

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2016年11月11日 ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど

今回のコラムタイトルを見て、違和感を覚えた方も多いかと思いますが、これから紹介する事例を読んでいただければ、納得いただけると思います。先日、飛騨高山の本陣平野屋花兆庵が、台湾で人気の「ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど」という台湾の女性と日本の男性が家族で日本を旅するというブログ(FB)で紹介されました。※ 雖然媽媽我不可以嫁去日本。(ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど) https://www.facebook.com/luffyimcoming/(facebook)
 
実際にこの家族が飛騨高山を訪れ、花兆庵に宿泊し、その様子がFBやユーチューブに動画をアップされたのですが、1記事に対して約5,500件程度の「いいね」が集まっていました。
 
この企画は=※玩轉日本中部跟茂木家探秘去! https://tw.hotels.com/page/hotelsmogis/?=rffrid=smm.hcom.tw.002.001.003.Trex-Sept24-MOCPというもので、ホテルズコムというOTAが企画したようですが、影響力は確かなものがあります。ただ、海外のブロガーすべてが影響力を持っているかは未知数です。
 
宿の経営者のなかには、広告会社などから紹介された、中途半端なブロガーに費用を払った結果として、宿HPへのアクセス数が10件も満たなかったという失敗談も多くあります。これはブロガーの良し悪しが問題ではなく、紹介する「人」によります。ブロガーが「どの程度の影響力」を持っているかは「結果」次第で変わりますが、無名の観光地よりは、ある程度の人気のある観光地をさらに人気観光地にする、という流れはできているようです。

インターネットの発達で、旅行会社や広告会社でない存在=個人の発信力が旅行を誘発する要素の1つになっています。地道な情報発信はもちろん大事ですが、観光地の魅力を磨くことも重要です。

そういった意味で岐阜県の飛騨高山は行政も積極的に「観光」に力を入れていていますし、当然、そこで商売する「観光業」(宿、物産店、地域のかかわる方々)も真剣に「観光」に力を入れています。
 
愛知県中部のセントレア空港という、巨大な集客力を持った空港の力を冷静に把握し、アクセスの向上などにも努めています。広域連携(昇竜道 http://shoryudo.go-centraljapan.jp/ja/)にも力を入れているといった要素もあり、外国人観光客からの成果(集客)がうまくいっている事例と言えるでしょう。ただ、海外のブロガーを連れて来て記事を書いてもらう『だけ』で、外国人観光客が増大するわけではなく、飛騨高山のような努力の積み重ねで「結果」が出るということです。

ともあれ、旅行会社以外のユーザーが、日本というコンテンツに興味を持って紹介し続けていただけるということはありがたいことです。今後も世界中でこういった人たちが日本を訪れてくれることを切に願うものです。

2016.11

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2016年9月11日 デポジットと事前カード決済

海外のホテルに泊まると、ほぼ100%デポジットをチェックイン時に取られます。この夏利用したホテルも、チェックイン時にクレジットカードでデポジットを取られ、チェックアウト時に「返金は2週間後です」、と笑顔で言われました。

部屋の備品が盗まれたりすると、そこから強制的に徴収されるのでしょう。また、ホテルのキャッシュフローをよくするための一時金なのでは、とも疑ってしまいます。
 
デポジット(deposit)は「保証金」と訳され、容器やサービスを利用する際に必要なカードなどを借りる際に支払う「預かり金」のこととあります。盗難や部屋の備品を壊さないように、という抑止力は働くことでしょうが、なかなか日本の旅館でここまでやっているケースは少ないように思えます。

顧客に対する接し方が「性悪説」に基づいている西洋の契約社会を表す仕組みですが、グローバルスタンダードはやはりデポジットが必須であると同時に、予約時に事前カード決済を強く求められます。
 
日本の「旅館」おいては、「宿に泊まる」ということが、個人との「信用」や「社会的常識」が前提にあり、旅行代理店などを介さない直接予約時に事前に入金を促すという文化はあまりないように思えます。一部の宿では、宿泊代金の一部事前入金必須というケースもありますが、そこまでしている宿は少ないでしょう。
 
しかし、これだけ日本人以外のお客様も旅館に泊るようになると、「日本ではコウだから」という話はグローバルで揉まれている旅行者には通じません。

良かれと思って提供している予約の仕組み(事前入金なしで、宿泊当日支払い)を逆手にとり、「カード番号を聞かれてないから、宿に連絡をしなくてもキャンセルOK」と考える一部旅行者は残念ながら存在します。
 
同様に、デポジットという仕組みがないがゆえに、宿から枕などが盗まれたり、畳にキャスターの傷が深々とつくという被害を、全国の宿で聞いたことがあります。
 
そんな時、これらの被害のうちいくつかは「デポジット」を取れば、宿が泣き寝入りしなくともよいのかもしれません。海外のホテルのデポジットルール(宿泊料金×○×%等)があるのかもしれませんが、日本ではまだ「デポジット」という仕組み自体が整っていない状態です。
 
もちろん、リピーターに対して「デポジット」を求めると、「私を信用していないのか」という話になりかねないので、お客様の選別は必要になり、オペレーションが煩雑になる可能性はありますが、健全な業界発展として制度の普及を目指していくべきだと考えています。
 
「おもてなし」という、ぼやっとした話を推し進めるのではなく、こういった「宿がデメリットを受けない仕組み」づくりを、もっと国をあげて取り組むべきステージに入ってきたと思います。

2016.9

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2016年7月11日 予約リードタイムの長期化

先日、あるクライアント旅館で、予約課の皆さんから「来年4月以降の予約リスクエストも多くいただいているのですが、他の旅館さんはどうですか」という質問をいただきました。この旅館は、インバウンド絶好調のエリアにあり、細やかなおもてなしが外国人観光客にも評価され、近年急激にインバウンド比率を上げているところです。
 
日本人の予約が入ってから実際に宿泊するまでの日数「リードタイム」は、1ヶ月前程度でしたが、ネットの発達により、どんどん長くなってきています。
 
正月やお盆、花火などの特殊な日は、泊まられた当日に、その翌年の予約を入れてお帰りになることもあるので、特殊な繁忙日のリードタイムは長くなりますが、一般的に日本人が来年の予約を国内の宿に入れることは稀です。
 
ただし、これが海外旅行などになると、航空機手配やスケジュール調整など、さまざまな要因により、リードタイムが長期になります。これだけ外国人観光客が日本に多く来るようになると、人気エリアの人気宿のリードタイムは必然的に「長く」なってしまいます。
 
結果的に、繁忙日(もっというと繁忙月)などは、予約のリードタイムの長い外国人観光客に、先に全ての客室を抑えられ、日本人の受け入れが難しくなるというケースも出ていることでしょう。
 
それで、「良し」とする宿はそれで良いでしょうが、冒頭の旅館では、来ていただくお客様を拒むわけではないが、リピーターなどを含む日本人のお客様も大切にしていきたい、という考えがありました。
 
そんなときに、存在する「在庫」を全てインターネットにサイトコントローラーなど通じて出してしまうと、結果的に外国人観光客のお客様ばかりになり、日本人のお客様からは、「○○旅館はいつ電話しても満室で、一体いつなら泊まれるんだ」というお叱りを受けてしまいます。
 
現実的に、この旅館は年間客室稼働率が90%を超えていますので、そのようなお声をリピーターから頂戴するとのことでした。
 
そういった事情もあり次年度からの在庫調整は可能な状況にありますが、今後は細やかな在庫調整をしていこう、という話になりました。
 
また、同時に客室をブロックしておきながら売り切れないリアルエージェントも削減しよう、と下期からの在庫減の話も進めていっていただいております。
 
マーケットの状況が変わると、手法も変わるのは当たり前ですが、「どういう道」を選んでいくのかは、宿側にイニシアチブがあります。ただ、このインバウンドブームに流されると、ブームが去った後は、強烈に痛いメにあいます。
 
売れているときだからこそ、経営が順調な時だからこそ『誰向けの宿になっていくのか』ということを考え、対処法をトライ&エラーで実行していかないと、流れにのまれて終わってしまいます。

2016.7

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2016年5月11日 他館との連携プラン

箱根にあるクライアント先の「オーベルジュ箱根フォンテーヌ・ブロー仙石亭」が 2016年4月21日、「オーベルジュ フォンテーヌ・ブロー熱海」を開業しました。昨年の箱根噴火の影響があるなかでの開業ですが、「ピンチはチャンス」という言葉を実践され、大変素晴らしいことだと思います。
 
そんななか、元々営業していた「オーベルジュ箱根フォンテーヌ・ブロー仙石亭」が、熱海開業応援の意味を込め、「フォンテーヌ・ブロー熱海開業記念プラン」という宿泊プランを造成しました。プラン内容を一部抜粋すると、「2016年春、熱海に『フォンテーヌ・ブロー熱海』がオープンいたします。開業記念プランとして、特典付のプランをご用意いたしました」とあります。
 
特典としては1番目が「フォンテーヌ・ブロー熱海」で利用できる5千円分館内利用券(1組様につき1枚)プレゼント。これは飲料代、追加料理代等に利用できます。ただ、公式HPか、電話での直接予約に限ります。
 
2番目がレイトチェックアウト(正午まで)というプランです。箱根と熱海という、日本でも稀な観光圏を楽しんでもらおうという意味を込めた企画で、非常に順調な予約をいただいております。

こういったプランは、まず箱根(最初の宿)で満足や感動を覚えないと、次の宿(熱海)に泊まろうとは思いませんので、現場もモチベーション高く頑張っています。
 
「オーベルジュ箱根フォンテーヌ・ブロー仙石亭」として、お客様の評価を得ていたことが、売れ行き好調の要因でもあるでしょう。ちなみに、本プランは各OTAにも登録しており、公式HP以外のOTAでも予約は好調です。
 
今回は「運営が同じ企業」での試みですが、こういった“次”につなげる取り組みは業界を通じてやっていきたいものです。 

OTAでポイントがほしいお客様は、いくらこういった企画を展開されても心に刺さることはないでしょうが、すべての人にポイント信仰があるわけではありません。一方で、こういった取り組みにより、「宿泊施設は公式サイトからの予約を一番希望している」ということも発信していく必要があると思います。
 
もちろん、「日本秘湯を守る会」などで既に“会員”のお客様にベネフィットを与えお客様を提携宿で共有するという取り組みはありますが、「秘湯」という切り口以外でも宿を楽しむお客様はたくさんいます。そういう「楽しみ方」を宿側から提案していかないと、単純な価格競争に巻き込まれてしまいます。
 
どういった「切り口」、「セグメント」でという具体的イメージはありませんが宿を投資対象の観光ビジネスとして扱うのではく、「純粋に日本文化である宿をもっと広く世間のお客様にPRしていきたい」という志をお持ちの方々とゆるやかな」連携を模索できればと考えております。

2016.5

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2016年3月11日 好調時こそ、次を見据えよう

先日、東京のホテルに久々に泊まって、その利益重視の姿勢に驚かされました。宿泊したのは、全国にホテルを展開する某ホテルチェーンです。宿泊料金が以前の1・4倍程度になっていたのは、昨今のインバウンドブームを踏まえると仕方ないことでしたが、驚いたのはサービスのダウングレード具合でした。
 
以前は、チェックイン時のフロントで入浴剤が無料でもらえたものが、有料で100円になったり、部屋に無料のミネラルウォーターが置いてあったのが、有料で150円になっていました。
 
さらに、アメニティにボディタオルがあったのも、無くなっていました。宿泊料金を上げてさらにコスト削減に走る姿には、心底驚きました。外国人観光客が多いせいか、シャンプー&コンディショナー&ボディーソープの「香り」が、以前よりも強烈になったのも印象的です。
 
需要(お客様の泊まりたい、というニーズ)よりも、供給(ホテルの数)が少ない状況になると、「ここまでやるんだ…」ということを実感しました。
 
しかし、こういった需給バランスのとれていないときに、企業側の視点のみに立った経営をしていると、次の「波」(景気後退期)に突入したときに苦労します。
 
今回の事例は「東京」という一大ビジネス都市だからこそ可能なのであって、これを地方の旅館がすると、大きなしっぺ返しにあうことでしょう。
 
当社のクライアント先旅館でも、当該地域に相当数のインバウンド客が来店し、地域の旅館すべてが順調というケースもあります。
 
そのときに考えないといけないことは、「宿の経営努力」も影響しているが、「地域」としての魅力があってこそのブームも存在するということです。マイナス発想は好きではありませんが、一世を風靡したブームのような現象が過ぎ去ったときの破壊力はすさまじいものがあります。
 
昨今のリアルエージェントやドライブインの衰退具合を見ると、少し時代から外れたり遅れてしまうと、過去の栄光は何だったのだろう、と思うくらい落ち込みます。
 
危機感をもって経営に臨んでいる場合と、好調で惰性経営する場合では、前者の方が圧倒的に新しいサービスや商品が開発されます。経営は「絶好調な時ほど危ない」というのは、歴史が証明しています。
 
経営を続けていくための利益を得ることは、もちろん必要ですが、良心をなくしてしまい、利益のみに走ってしまうと、結果的に大事なお客様を失ってしまうことにも繋がりかねません。
 
設備投資や、おもてなしの改善によって単価を上げることを否定はしませんが、冒頭の事例のように、単価を上げてサービスをダウンさせる、というようなことを続けていくと、いずれ破綻の道に至ります。
 
好調なときこそ、「次」を見据え、お客様とよい向き合い方を心がけ、実行に移さなければなりません。

2016.3

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2016年1月11日 料理とお酒マリアージュプラン

箱根のオーベルジュ「フォンテーヌブロー仙石亭」で、『箱根マリアージュプラン』伝統のフランス料理と共に~シャンパン、白ワイン、赤ワイン、食後酒付~という宿泊プランが人気です。
 
フォンテーヌブロー仙石亭は元帝国ホテルの料理人がオーナーで、全室に露天風呂付客室を完備した、料理と温泉を楽しむオーベルジュとしても人気です。食に詳しいお客様だけでなく、若いお客様の利用も増えています。
 
そんななか、食(特にフランス料理)に詳しいお客様は、メニューに合わせてワインを注文して楽しんでいますが、場慣れしていないお客様はワインの注文に困られるとか。
 
もちろん、ダイニングのスタッフに相談すれば、お客様の要望を聞いて、最適のワインを提案できるのですが、そのようなことすら知らないお客様も多いそうです。そこで、「箱根マリアージュプラン」を造成しました。
 
プランの説明文の中には、「季節替りのフランス料理フルコースのそれぞれの料理と共に、選りすぐりのワインをお楽しみください。シャンパン、白ワイン、赤ワイン、食後酒を伝統のフランス料理と共にお楽しみくださいませ。※それぞれお一人様につき1杯ずつ4種類のお酒をお楽しみくださいませ」という一文を入れて、販売しました。
 
すると、若いお客様層から多くの予約をいただくようになりました。さらに、旅慣れたお客様からも「どんなワインや飲み物を提案してもらえるのだろう」と予約が入るようになったという話を聞いています。
 
マリアージュ(mariage)とは、フランス語で、飲み物と料理の組み合わせが良いことという意味です。とくに、ワインと料理の組み合わせについていいます。
 
料理とお酒を楽しむのは個人の嗜好によるところが大きいので、一方的な押し付けは好ましくありませんが、「どんなワインをどの料理にあわせ、注文すればよいのか」ということは、経験と知識が必要となってきます。
 
もちろん、そのためにダイニングのスタッフが存在するわけですので、積極的にお客様から聞かれれば、答えることができますが、それすらもできないお客様がいることも確かです。
 
また、ワインに詳しいお客様でも「ワインと料理を楽しむ」ことよりも、「相手との時間と空間を楽しむ」ことに重きを置くお客様もいます。
 
フォンテーヌブロー仙石亭の支配人は「料理やワインのことは、いくらでも語ることはできますが、それをどの程度お客様に伝えるかが、難しくもあり、楽しみでもあります」と話しています。オーベルジュに泊まるお客様が「何を」楽しみに来館するのかは、それぞれに異なってきます。この料理にはこのワインが一番、というような一方的な押し付けではなく、「こういったワインが料理にあいますよ」という提案を事前にすることが、楽しみの幅や奥行きを広げることとなります。

2016.11

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2015年11月11日 人材獲得のために

岐阜県飛騨高山の本陣平野屋さんが「2億円」をかけて社員寮を建設します。2億円というと、旅館が1つ建つような金額ですので、「えっ2億円ですか!?」と度肝をぬかれる方が多いです。
 
本陣平野屋さんの業績が好調なことと、大切な経営資源である「人」に投資する。人(従業員)を大切にし、人(従業員)をより集めやすくするという考えでの寮建設ですが、なかなかできることではありません。

私も最初にこの話を伺ったとき、「ちょっとしたペンションや民宿のスペックよりも良い社員寮ができるのではないか。それよりも、他の投資にまわされた方がよいのではないか」と正直感じました。ただ、お客様に永続的に安定した「おもてなし」を提供するには施設や料理なども大切ですが、やはり最後は「人」ということでの決断だと思われます。全国的にみても、有効求人倍率が上がってきており、人手不足です。どの業界でも「人がいない」と嘆いている様相ですが、これだけ働く環境を自由に選べる状況であると、もはや業種間の争いにも発展します。
 
つまり、以前は「A旅館からB旅館に転職したがために、A旅館が人手不足になった」という話が多かったのでしょうが、現在は「A旅館からB社(異業種)に転職したがために、旅館業から人がいなくなった」という話が多いように感じます。
「感じます」という曖昧な表現になってしまっているのは、退職者の「次の職場」を知ることが難しくなってきているからです。ただ、周りから聞こえてくる話を推測すると「どうも○×企業に就職したらしい」という話は、地方であるほど、後日判明します。
 
とすると、旅館業も「他の旅館やホテルなどから転職してくる人」を対象にするという発想と共に、「他の業種から旅館に転職してくる人」もターゲットにしていかないと人材の先細りになってしまいます。
 
本陣平野屋さんでは、住環境の整備も1つの武器になるとの考えで、寮を建設されるのでしょう。当然、住環境のみならず「働く環境」も大切ですので、現在それらをまとめたホームページもリニューアルの最中です。
 
もう1つの考え方として、「人がいなくとも、お客様に不便を感じさせることなく旅館がまわっていく経営方式」という発想も考えられますが、そうなると、「館内設備をどうするか」という問題に突き当たります。どの方式が正解、ということはなく、各旅館がそれぞれの考えのもとで改善を加えていくことになるのでしょうが、大切なのは「人がいない」とただ言っているのではなく、「だ・か・ら、どうする」という段階に話を進め、具体的な行動に移っていかなければなりません。
 
旅館で働く「人」という存在は、ある意味その旅館を特徴づける最大限の「商品」でもあります。「人」にどれだけ投資できるかが今後の旅館経営を左右することになるでしょう。

2015.11

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2015年9月11日 旅館の売店の優位性

先日訪問したクライアント旅館で、夏の売店増売キャンペーンが始まっていました。例年、7月の小学校終業式から8月いっぱいにかけ、お子様連れのファミリー層でにぎわう旅館です。
 
今年は、館内お宝さがし(館内にシールを隠し、それを探してもらう)や玄関前のスーパーボールすくい、チェックイン時に花火プレゼント(花火をする会場は売店を奥に進んだ特定スペース)、ビールやかき氷などをハッピーアワー(午後3時―5時30分)を設け販売、特定商材を買うとちょっぴりプレゼントがもらえるキャンペーンなどを、並行して展開しております。
 
現在のところ、お客様の評価もよく、夏休みに突入した期間の日次売上も順調に推移している、という嬉しい報告もありました。
 
こちらの旅館では消費税増税後、例年通りの集客人数を記録しても売店部門の売上が下がってしまう、という状況でした。「旅行に行く」ことで消費が精一杯で、宿では追加のお金を一切払いたくないというお客様が増えたことも事実です。
 
旅館業では、宿泊売上より売店売上の方が多いというのは稀なケースでしょう。宿の業績を向上させるためには、売店部門の強化より、まずは宿泊部門を強化すべきというのは当たり前のことです。
 
しかし、宿泊部門を強化し、一定の稼働率に達してしまうと、それ以上お客様を泊めることは不可能になりますので、館内の付帯売上(とくに売店)を強化することが必要となってきます。
 
ただ、ここにも以前よりもはるかに「競合施設」が増えてきています。我われの税金で地域活性化を狙って全国に山のように造られている「道の駅」などは最たるもので、なぜもっと「民業圧迫なのでは」という声が上がらないのか不思議です。ロードサイドや主要観光地には素晴らしいお土産物屋さんがたくさんオープンしています。
 
純粋に商品の品ぞろえなどでは、館内によっぽどの敷地面積を持つ宿以外は、それらのお店に勝つことはできません。ただ、それらのお店と比べ、圧倒的に優っている部分は「お客様の滞在時間」です。夕方の午後3時にチェックインし、翌日の午前10時までいるお客様に対し、「ただ売店で物を買ってください」というお願いをするのではなく、「イベント」として楽しんでいただくと、消費がともなってきます。
 
以前の団体旅行のように、饅頭詰合せ1人10セット、というような客層は減っており、個人旅行のお客様が多いなか、単純に「魅力ある商品」をそろえるというだけではお客様には響きません。
 
それぞれの宿の規模や、対象客層を想定し、「商品+イベント(体験)」を行っていけば、冒頭の事例のように良い結果が生まれるケースもあります。
 
「ただでさえ忙しい夏にそんなことできません」という声もあるでしょうが、「ちょっとしたこと」で消費を促す。その試みが実り多き夏になることを願っております。

2015.9

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2015年7月11日 調理人の負担が少ない料理プラン

世界自然遺産「知床」にある「しれとこ村」の姉妹館「国民宿舎 桂田」では、今年から「オホーツク海を見ながら夕食を」の知床炉端焼きプラン(2食付)という宿泊プランを造成しました。
 
知床は季節波動が大きく、6-10月までは客室稼働率が100%近いにもかかわらず、冬季は逆に20%程度まで落ち込む過酷な観光地です。しれとこ村は通年営業、国民宿舎桂田は夏の期間のみ営業、というスタイルで長年経営をしていました。
 
通年営業のしれとこ村は、料理長が知床の海の幸を、「ありえないほどの安い原価」で仕入れ、素材を活かした料理をお客様に出しています。
 
一方、国民宿舎桂田は、夏期間のみの営業で、料理人が定着せず、毎年料理人を募集するのに苦労していました。
 
そんななか、食事スタイルの改革という話が出て、「手の込んだ料理はしれとこ村に任せて、国民宿舎は素材勝負&料理人いらず(調理の手間を極力かけないスタイル)で勝負しよう」という話になりました。今夏から、宿の前にプレハブの食事処を設けて、前述の宿泊プランの販売を開始させました。
 
プランは、ウトロ港で揚がるオホーツクの新鮮で安心安全な魚介の数々、北海道・知床ならではの味覚とボリュームをお楽しみください、という内容。
 
夕食の一例で「2015年夏新規OPEN!オホーツク海を一望できる食事処で『知床炉端焼き』」を紹介すると、つぶ貝に蛸、平貝の魚介類とじゃがいも、トマト、かぼちゃ、ピーマン、パプリカの野菜などを使ったカスベホイル焼きに鹿肉ソーセージやラム肩ロース焼き、焼きおにぎり2個という内容です。
 
プラン造成の途中、「カニをつけなくても大丈夫か」という話もありましたが、知床に来るお客様は、既に北海道の他の観光地で宿泊し、そこでふんだんにカニを食べているので、逆にカニをつけない方が新鮮なイメージを出せると判断し、販売に踏み切りました。
 
ドキドキの販売スタートでしたが、蓋をあけてみると、予約も絶好調で、我われの心配も杞憂に終わり安心しました。
 
今後は旬のカキやイバラガニ、ケガニ、タラバガニやウニなどの食材を、旬の時期に合わせてオプション販売して単価アップ&魅力アップをはかってもらう予定です。
 
内容を見て、こんなメニューは料理ではない、という意見も確かにあるでしょうが、知床で本格和会席を出してもお客様のニーズにそぐわないところがあります。
 
宿の目の前の海で、シャチやイルカを見ることができ、部屋の窓からはシカやクマが歩いているようすがわかるような宿では、繊細さよりも「豪快さ」が求められています。
 
どの観光地でも、知床と同じようなことができるわけではありません。ただ、料理人の手配が難しいというマイナスの条件をプラスに変えることに可能性を感じることができます。

2015.7

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2015年5月11日 アドバンスパーチェスプラン

春休みに、フィリピンのセブ島に行ってきました。私が海外に行くときは、飛行機の便が取れないなどの特殊な事情がない限り、旅行会社を介在させず、飛行機もホテルもすべて自分でネットを使い手配します。海外のホテルが、FIT客に対してどのような取り組みをしているのかも体感できますし、何より自分が「予約する」ことで、日本の旅館予約などの参考にできないかを探る意味もあります。
 
今回もホテルを「アドバンスパーチェス(ADVANCE PURCHASE)」というプランで予約しました。「アドバンスパーチェス(アドバンスペイメント)」とは、JTBの海外旅行用語辞典によると、「ホテルなどの予約時に支払う前払い金。金額や時期など条件は事業者ごとに異なる。早期割引などで請求されることも。ほとんどの場合キャンセルしても返還されない」。要は、通常料金よりも安いけれども、キャンセルや変更はできないというプランです。欧米系の「契約社会」に基づいた考え方で、このプランで予約した段階でクレジットカードの入力が求められ、予約時に宿泊料金が決済される仕組みになっています。
 
決済されるのは宿泊料金だけで、オプションのSPAや朝食などは現地決済。海外資本のホテルでも、シャングリラグループなどは「アドバンスパーチェス」プランとして、①チェックイン日の7日前までに行った予約に対して適用②予約時にクレジットカードによる全額の前払いが必要③予約のキャンセルや変更の際には、前払い料金の払い戻しはできない――という規約をもとに、「7日前までのご予約で、ベストレートの15%オフ」というプランを販売しています。
 
「早期予約特典プラン」などを展開している当社クライアント旅館でよく起こるのは、早割プランで申し込んだあとに頻繁に予約変更をし、キャンセル料規定を無視したり、現場オペレーションを混乱させたりするというケースです。
 
宿側にとっては、早期に部屋を押さえてくれるのでありがたいですが、だからと言って、何もかもをお客様の自由にするという必要性はありません。
 
そこで、「アドバンスパーチェス」という言葉と考え方を用いて、日本の旅館に合せてこのプランを当社クライアント旅館の何社かに販売いただきましたところ、今のところとくにトラブルの報告はありません。
 
日本の旅館は、予約のキャンセルや変更に対して、海外のホテルに比べ優しすぎ(甘すぎ)ます。お客様に対して、すべてを「契約だから」と冷たくあしらう必要はありませんが、ある程度の「縛り」は必要です。
 
インバウンド客が増えていくなか、我われの文化とは違う、常識を超えたお客様との付き合いも今後さらに増えていきますので、単純に海外ホテルの真似をするということではなく、お客様に合わせたプラン展開やオペレーションが必要になってくるでしょう。

2015.5

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2015年3月11日 プラン造成は最大の販売促進

昨年の秋からコンサルティングをさせていただいている「オーベルジュ箱根フォンテーヌブロー仙石亭」さんの業績が絶好調です。こちらの施設様はもともと、料理も施設もおもてなしも素晴らしい施設様ですが、もう一段階の成長をということで当社にご依頼をいただきました。
 
業務遂行にあたり、オーナーシェフにいろいろとお話をうかがっていると、やはりオーベルジュと謳っておられるだけに「料理」へのこだわりは並々ならぬものをお持ちでした。ただ、残念なことに顧客から要望があれば対応するというオペレーションであり、プラン数も少ないというのが現状でした。
 
私もそうですが、旅館コンサルティングに従事するまでは、「宿泊に際し、宿に要望を言う」という発想そのものがありませんでした。つまり、宿側から「こういうこともできます」というアプローチをしないと、お客様は「自分の求めているものとは違う」と思っても、そもそも問い合わせをしないという現実があります。
 
そんな話をしつつ、稼働状況や原価計算をしながら、既存のオペレーションを乱さない範囲で、宿泊プランを造成いただいたところ、昨年12月も過去最高売上という結果が出ました。
 
そのなかでも、「【軽めのお食事】フルコースお肉orお魚を選ぶライトディナーコース」というプランがとくに反響が大きかったです。このプランは、フォンテーヌブロー仙石亭の支配人の方と会議をしている際に「女性のお客様から、量が多いという意見がある」という話を聞いて、そこから造成いただいた宿泊プランです。そのニュアンスが伝わるように宿泊プラン文章に、「『お食事は軽めの方がいい』というお客様のためのライトディナーコースです。メイン料理をお肉料理かお魚料理からお選びいただき、通常のフルコースディナーより2、3品少ない料理になっております」との記載を入れていただきました。
 
すると予約の備考欄に「フルコースは食べ切れるか心配だったのでこのプランにしました」という、まさにこちらの意図に合致するお客様が増えました。さらには、奥様が肉嫌いでご主人が魚嫌いという食の好みが異なるご夫婦などからの予約もいただいきました。
 
このほかにも、対象顧客を想定し造成した宿泊プランが、その意図通りに受注するケースや、こちらの想定を超える発想でのご予約をいただき、結果的に全体の業績も向上したという流れになっています。特定の広告に費用を投下する販売促進もあれば、自社の想いを宿泊プランにのせてお客様に発信するという販売促進もあります。「思い」は思っているだけでは伝わらず、「カタチ」にして「発信」しないとお客様には届きません。
 
「売れる、売れない」という発想に基づいた宿泊企画造成も必要ですが、「思いを届ける」という視点でも考え、実行に移すと新しい道が開けることでしょう。

2015.3

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2015年1月11日 ベジタリアン料理の可能性

最近、当社クライアント旅館の予約動向を俯瞰的に眺めてみると、「ベジタリアン料理に対応できますか?」というお客様からの質問が、日本人、海外観光客問わず多くなってきたように思えます。宿側にとっては、日本の料理には旬の素材を用いたものが多く、多様な食材を職人の腕で芸術品までに高めた日本料理を食べてほしいという想いがあると思いますが、「お客様のご要望に応えられないのもいけない。でも、実際に野菜ばかりの料理だと味気ない」という声も現場から多く聞きます。
 
私も、アレルギーなどならまだしも、野菜だけ食べる人生など味気ないと思ってしまいますが、「ベジタリアン」という食生活が市民権を得てきていることは実感しています。 「ベジタリアン」と一口に言っても、ランクがあるそうです。代表的なものでいうと、ラクト・オボ・ベジタリアン(Lacto-ovo-vegetarian)は乳卵菜食で、乳製品と卵は食べます。ラクト・ベジタリアン(Lacto-vegetarian)は乳菜食者で、乳製品は食べます。チーズは乳製品だが、牛を屠畜して胃を取り出して消化液を集めたレンネット(凝乳酵素)を使って作られたものは食べません。オボ・ベジタリアン(Ovo-vegetarian)は卵菜食者で、鳥や魚介類などの違いは問わず卵は食べ、なかには無精卵に限り摂る人もいます。ヴィーガン(Vegan) は純粋菜食者で、完全菜食主義者。倫理的、環境的な理由で乳製品、蜂蜜などを含む動物性食品を一切摂らず、革やウール製品、そして娯楽など、食用以外の動物の使用も排除します。
 
繰り返しになりますが、私はベジタリアン料理を推奨してるわけではありません。むしろ、リサーチしていても、意味はわかるけれどもあまり共感できないというのが本音です。人は生きている限り、動物であれ植物であれ「他の命」をいただいて生きているわけであり、その本質は肉も野菜も同義であると個人的には考えております。
 
当社クライアントのゆめやではベジタリアン対応をしているというので、「菜食派のための精進会席コース~ベジタリアンのお客様にも」という宿泊プランを造成していただきました。料理メニューはゆめやの公式ホームページに掲載していますが、前菜からデザートまで野菜を使ったメニューになります。今までは海外からのお客様や、ベジタリアン志向のお客様からのご要望があったときにこうした料理を出していたそうですが、今後は積極的にPRしていこうという話になりました。
 
宿の現場からは、ベジタリン料理以外でも「グルテンフリー(主に小麦粉を使わない料理)」なども、海外のお客様からのご要望で増えてきているという話を聞きます。お客様のご要望を安請け合いするのではなく、旅館ならではのベジタリアン料理という発想に立ち商品開発を行えば、新しいお客様への道が開けることでしょう。

2015.1

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2014年11月11日 OTAも選別の時代へ

先日、あるクライアント旅館での会議中に出た話です。この旅館とは10年近くのお付き合いで、毎月現地を訪れています。元々、日々精進されている素晴らしいおもてなしと、積極的な営業姿勢により、年間稼働率が 90%に迫り、これ以上 売りたくとも「売る部屋がない」という状況になってしまっています。
 
その旅館では、自社ホームページを含むネット販売を強化し、ネットエージェント(OTA)ごとに多少の価格差はあれど、365日、空いている部屋があればサイトコントローラーを使い「平等に」部屋を提供していました。
 
ネット販売において、多くの「売り場」をシステムの力で開拓するのはアクセスアップに繋がるので、その戦略は間違っていません。しかし、長年その戦略を続けていると、どうしても「偏り」が出てしまいます。ここで言う「偏り」とは、「平日も多く販売しているOTAがある反面、休前日などの特定日しか売れていないOTAも存在する」ということです。
 
この旅館にとって、休前日は放っておいても売れるので、その特定日のみに予約が集中するOTAの存在は、部屋をブロックして、特定日しか販売できないリアルエージェントと同程度の価値しかありません。つまり「平日にどの程度売ってくれるのか」が重要な要素となります。(「売ってくれる」と他力本願的な言い方をしましたが、前提条件として魅力的なプラン造成などの宿側の企業努力が存在します)。
 
さらに、OTAのなかでも売り上げ構成比を高く占めるサイトで上位検索されるために、「売上」の要素が多くなってきています。休前日などの特定日しか売れないOTAで貴重な部屋を売るのであれば、売上構成比の高いOTAや自社HPで「売りやすい日(部屋)」を売り、さらなる増売と利益向上を考えていくのは自明の理です。この旅館では、サイトコントローラーのシステムも活用し「平日に多くの送客をしているサイト」に優先的に「売れる日(特定日)」を売るという施策を行うことを決めました。
 
自社HPと売り上げ構成比率が高いOTAには、「売れる日(特定日)」にも部屋を出しますが、それ以外の貢献度が低いサイトについては、平日(売りにくい日)しか部屋提供をしないという「戦術」を取っていくということです。
 
さらに、この機会に「もう一度、リアルエージェントの客室提供を見直し、それによって取引をやめるケースも厭わない」という結論に達しました。リアルエージェントの客室提供を見直し、ネットに部屋を出すというのは既に当たり前になっていますが、ここにきて「OTAのなかでも優先順位をつける」という施策を考える時期に来ています。
 
媒体ごとの「平日貢献度」を検証すると、また新しい施策が見えてきますので、一度検証されてみることをオススメいたします。

2014.11

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2014年9月11日 USJの成功は魔法ではない

先日、とあるクライアント旅館に某大手旅行会社の方がお見えになり、今後の施策などの説明を受けました。そのなかで印象的だったのが、「今はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)への送客の勢いがすごい」と得意気に話されていたこと。USJといえば、この7月に世界的に人気な「ハリー・ポッター」の新エリアがオープンし、その盛況具合が連日、テレビや新聞で取り上げられています。
 
ただし、このハリー・ポッターエリアはUSJの入場券に加え、そのエリアに入る整理券が必要とのこと。当日入場の場合は園内で配布される整理券が必要だが、先着順で数量限定。そのため、旅行でUSJに来たが、お目当てのハリー・ポッターエリアには入場できないというケースも想定されます。
 
そんななか、某大手旅行会社はハリー・ポッターエリアに確実に入場できる「確約入場券」付きツアー「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの旅」を発売しています。新エリアへの確約入場券とホテル宿泊がセットになっているもので、発売以来、予想を超えた売り上げを計上しているとのこと。また、JRでも、USJのスタジオパス(1日券)と新エリアへの確約入場券、往復の新幹線指定席などをセットにした「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンスペシャルきっぷ」を発売し、こちらも売上が絶好調とのことです。
 
このような状況を受け、「旅行業界、USJの影響もあり活況」などという報道も流れていますが、本質はUSJが活況なだけで、旅行業界の施策がすごいというわけではありません。ゴールデンウイークや盆、正月に宿の部屋を旅行会社が抑え販売していることと何ら変わりないです。
 
旅行会社は宿命的に「人気の、人が行きたいと思う場所」に人を運ぶ商売です。しかしながら、もともと人気のある、人が行きたいと思う場所に人を運ぶことだけを考えるのではなく、世間にまだ認知されていないが素晴らしい観光資源を、旅行業界が世間に知らしめていく、という気概がないと、単なる便利屋(今回のケースでは、人気チケットを抑えパッケージで売り捌くだけ)と化してしまいます。「旅行会社はそんなもの」という意見もあるかもしれませんが、これからの時代、それだけしかできない企業の生き残りは難しいでしょう。
 
旅行者を受け入れる側から考えると、USJのように「遠くからでも行ってみたい」とお客様に思わせることが必要になります。旅行会社へ送客をお願いする営業努力もありますが、旅行会社の方から「ぜひおたくの宿に泊まりたい」「おたくに訪問したい」と言わせる努力も必要です。
 
当然、USJも相当な戦略と投資の成果で今の繁盛ぶりがあるのであり、何も「魔法」を使ったわけではありません。「来てください」という営業ではなく、「ぜひ行かせてください」と言わせる営業施策も突き詰めて考え、実行していかなければなりません。

2014.9

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2014年6月11日 地域観光資源の効果的な売り方

「世界自然遺産の宿 しれとこ村」で「体験プラン」の拡充の話がでました。北海道知床は、世界自然遺産に登録され、アイヌ語で「シリエトク(地の果て)」を意味する言葉から知床と名付けられた土地です。
 
その自然に魅せられ、日本全国(最近は海外客も多い)から多くのお客様がいらっしゃいます。知床五湖、知床クルーズ、ナイトウォークなど多様なアクティビティもあります。また、観光客として訪れ、知床の自然に魅せられそのまま住みつく、なんて話も珍しくないとのこと。
 
ただ、アクティビティが人気な分、ガイドさんも多く、ツアー内容も多岐に渡るので、一見しただけでは、「何のアクティビティ」が、「いつ」、「いくらぐらい(価格)」で、「どうやって申し込むか」分かりにくいという問題がありました。
 
そこで、宿泊プランにアクティビティをインクルードしてしまおうということで、しれとこ村の支配人とパンフレットやインターネットを見て企画しようとしたのですが、パンフレットとネットで掲載料金が違ったり、出発時間がズレていたりと、一つひとつのツアー内容を確認しながらの企画になりました。
 
「これじゃぁ、お客さんはよくわからないよね」と言いながら、①【公式ホームページ限定】知床アクティビティ付きプラン②【公式ホームページ限定】知床クルーズ付きプラン――という 2つのカテゴリーでまとめて販売開始しました。
 
プラン販売開始から1時間ほどで早くも受注があり、以降も順調な予約が続いています。また、ご予約いただいたお客様から「アクティビティ内容がプランごとにまとまっていて選びやすかった」 「折角、知床まで来たのだから何かアクティビティをしたいと思い、宿と一緒に申し込めて良かった」「知床は2回目だけれども、こんなアクティビティがあるとは知らなかったので今回はパックで申し込ます」などというお声をいただいております。
 
ちなみに、宿とパックになっているアクティビティはすべて「保険」を含んでいますので安心です。ただし、パックにしたツアー代金にネットエージェントへ払う手数料は組み込めないので、当面は公式HPのみでの販売としています。
 
自分たちの住んでいる土地には、多くの魅力があり、それを効果的にお客様にPRできる企画もあるという観光地は多いものと思われます。しかし、それがうまくお客様に「伝わっているか」は別問題です。では、どうしたらうまくお客様に伝わるのかという命題に対し「宿泊施設とのタイアップ」というのは1つの答えです。
 
こういった宿泊プランが売れると、宿だけではなく地域のアクティビティ業者にも恩恵があり、地域の魅力ももっとお客様に伝わるという良い循環が生まれます。我が土地には素晴らしい観光コンテンツがあるとお考えの方は、ぜひ宿との協力体制を見直してみても良いのではないでしょうか。

2014.6

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2014年5月11日 宿のインバウンド対策とは?

2020年東京五輪開催に向け、「観光立国」というテーマが盛り上がりをみせていま す。さらに昨今の円安傾向や、東南アジア諸国へのビザ免除、LCC市場の拡大などにより海外からの誘客が日増しに増えています。
 
大都市圏やゴールデンルートと呼ばれる観光地以外にも、確実に外国人観光客は増えてきており、全国を出張するなかで、日本人もあまり見かけない地方の土地で海外の個人観光客を見ると、「ここは日本だったよな?」と自問自答してしまうケースもあります。
 
確実に外国人観光客が増えていくなか、行政や金融機関の方々の一部に「外国人観光客が増えているといっても、宿の受け入れ態勢が整っていないから、積極的に支援できない」という論調も散見されます。宿のコンサルティングをしている立場からすると、宿は「いらっしゃったお客様」に対しての対応力は非常に素晴らしいものがあります。「来ていただいたら最高のおもてなしを届ける」というのが多くの宿の特徴で、英語を話せなかろうが、文化の違いでトラブルが起ころうが、自力で解決し、ノウハウを宿に蓄積されています。「日本人のお客様で言葉が通じてもトラブルになる方もいらっしゃるので、そんなケースに比べると言葉が通じないぐらいどうってことないわよ」とおっしゃられる頼もしい女将さんの声も多く聞かれます。 

そんななか、集客強化に向けて宿が行うべきことは、やはりインターネット販売の強化です。(海外の団体客を誘客するのはインターネット対策だけでは不十分ですが)。ただ、海外からの誘客強化を目指し、いきなり自社ホームページに英語やそのほかの言語のコンテンツを掲載する前に、海外で展開しているネットエージェントの活用が望まれます。海外のネットエージェントと聞くと、対応がいい加減で、ノーショウ(予約のキャンセルも入れずに当日現れない客のこと)対策も十分でないことが多いので付き合いたくない、という声も聞かれます。しかし、よほどのブランド力と認知力を持った宿は別として、海外のお客様が日本の宿を探す際には、やはり「海外のネットエージェント」を使って検索されます。
 
まずは、効率的にその「検索の網」にひっかかり、海外のお客様に認知してもらう必要があります。それには、公式HPを多言語対応化することも重要ですが、それ以前に「海外のお客様に自らの宿の存在を探してもらう」という点からも考えていかなければなりません。
 
一方、ノーショウ、ギャランティード・リザベーションの問題など、業界として解決しなければいけない点も多くあることは確か。その解決策を他人任せにするのではなく、自らの経験のなかで、ノウハウとして進化させていくことが肝要です。これまでも、そうやって宿泊産業は自助努力で永続してきました。時代の転換点に来ている今こそ、もう1歩の経営努力が必要となってくるでしょう。

2014.5

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2014年4月11日 業界の流れを活かした施策を

エースJTBが女優の武井咲さんを起用したCMを流しています。はじめ、このCMの意味がまったく理解できなかったので、ネットで検索してみました。すると、赤いパンフレットのお約束(14年4月からの商品)というタイトルで、エースJTB経由で予約の顧客に対し、「お約束」をしていくという内容のようでした。
 
エースJTBのホームページで確認したところ、その「お約束」の内容は、①好評価の宿を厳選する②部屋の広さにこだわる③景色・眺望の良い部屋を用意する④夕食はパンフレット掲載の料理を提供する⑤夕食は温かいものは温かく冷たいものは冷たく提供する⑥主要の観光地では大きな手荷物を配送するか預かる⑦2部屋利用の場合は隣か向かいの部屋を用意する――というものでした。
 
旅行を計画中の消費者に対し、上記のような「お約束」を謳うことにより、「エースJTBで予約しよう!」と思わせる一種のブランド戦略も兼ねたCMだとは類推しますが、この「お約束」で果たして消費者の心が動くのか疑問です。そもそも旅行業界を知らない消費者に対して、「エースJTB」と言って話が通じると思っているのだろうかという点が、まず始めの突っ込みどころですが、「お約束」の内容も不可思議です。
 
エースJTBで予約された顧客に対して、「良い部屋をご用意しますよ」ということは何となく伝わらなくもないですが、⑤夕食は温かいものは温かく冷たいものは冷たく提供する――の項目などは宿を馬鹿にしているのではないかとも思えてしまいます。エースJTBの対象顧客である「個人客」のケースで考えると、今時、温かいものを冷たく、冷たいものをぬるく出すような宿はほとんどありません。
 
逆の捉え方をすると、このエースJTBの赤いパンフレットに「掲載されていない宿」は温かいものを冷たく、冷たいものをぬるく出すような宿なのかと消費者に思われてしまい、かえってデメリットなのではないかとも思えます。
 
裏話になりますが、当社のあるクライアント旅館ではこのJTBの「お約束」のため、JTB担当者に「今後、エースJTB経由でご予約のお客様は必ず○○の見える眺望の良い部屋に入れてください」と言われ、その旅館の担当者は「当館で必ず○○の見える眺望の良い部屋は8部屋しかないので、JTBさんに15部屋出しているのを返してもらわないといけないですね」とブロック数をJTBさんの要望に沿って円満に返していただいた、という事例もあります。
 
何だかおかしな話になっているなと思いましたが、結果その返してもらった部屋を直販やネットで機動的に販売できるようになったので、その旅館にとってはプラス効果を生んでいます。
 
宿側からしてみれば、業界の潮流に流されることなく、しっかりとした考え方を持って対応をしていかなければなりません。



2014.4

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2014年3月11日 ネット予約におもてなしの心を

皆様の宿の公式(自社)ホームページには、予約をされたお客様へうかがうヒアリング項目を設けていますでしょうか?
 
当社のクライアント旅館の場合は、予約フォームの備考欄で、①苦手な食材(アレルギーなど)②旅行の目的(夫婦&カップル、家族旅行、友人、その他)③同館HPまで辿り着いたきっかけ(知人紹介、雑誌、ガイドブック、旅行会社のパンフ、予約サイトなど)―― などを聞いてもらっています。インターネット予約は「部屋の自動販売機」と言う方もいらっしゃいますが、単純に手間をかけず、ただの自動販売機化してしまうと、大手ネットエージェントの資本力には到底かないません。
 
インターネット予約はできるだけ「効率化を求めなければならない」という命題と「事前のおもてなし」という二律背反の事象を突き詰めていかなければなりません。いわば、インターネットというツールにも“おもてなしの心”を入れていく必要があるのです。
 
お客様に事前に質問する意図は、「そのお客様が宿へどのような目的で来たのかを事前にできるだけ把握し、最高の時間を宿で過ごしていただくためのお手伝いをする」ということにあります。また、③の項目は、「数多くの宿があるなかで、どんなキッカケで当館を認識、発見していただいたのか」を把握するために設けていただきました。
 
③の項目で以外と多い回答が「大手旅行会社のパンフレットを見て」や「大手旅行会社のアンケートで評価が高かったため」というものです。これらのこ とからも、お客様のリアルな「動き」が宿側にも認識でき、マーケティング活動を行ううえで非常に参考になります。
 
さらに②の項目の回答は本当に多岐にわたります。「宿側が大した観光地ではないと認識していた場所への訪問」や「子供が高校に入学する前の旅行」、さらには「103歳の父のショートステイの予約が取れ、以前から行きたがっていた宿に泊まる」など、お客様が宿に求めていることの多様性が見てとれます。最近、老老介護(高齢者が高齢者の介護をせざるをえない状況)というネガティブなワードが散見されますが、老老旅行(高齢者といわれている方々が、さらに高齢の方と旅行に行く)と聞けば、何だかほほ笑ましく感じてしまいます。
 
また、最近当社のクライアント旅館の状況を見ても明らかに増えているのが「贈る旅」です。自分で宿に行くわけではないけれども、両親やお世話になった方に旅を贈りたいというギフトのニーズも高まってきています。
 
ただ、そういったお客様のご要望をただ右から左に流すだけでは、お客様に感動を与えることも、新しい提案をすることもできません。「ご予約いただいたお客様のご要望を事前に詳しく聞く」ということが、他社との差別化のキーポイントになっていく時代になるでしょう。



2014.3

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2014年2月11日 風習を企画に

先日、私の高校時代の友人が結婚しました。結婚式に参列したほかの友人と「高校時代の友人で結婚しているのは少ないよね」という話になりましたが、結婚している人が少ないということは、私と同年代の子供がいる友人はもっと少ないわけです。
 
統計的には2013年版少子化社会対策白書によると、11年の出生数は105万806人。第2次ベビーブームと言われた71―74年の間の最高の出生数が209万1983人なので、この30年の間に約半分に減ったということです。 つまり、このままの推移でいくと日本の人口は減るばかりというのは明らか。そうならないよう、さまざまな施策が取られていますが、現状を見る限りでは画期的な対応策は取られていないように思えます。
 
そんななか、以前もこのコラムで「赤ちゃんプランが人気」という内容を書きましたが、そういった現象の要因の一つとして、少子化が挙げられます。親世代の人口よりも、子供や孫の人口が少なくなっている現状では、投下できる資金や時間が昔より多くなってきています。生まれてくる子供の数自体が少ないのですから、その子供をより一層大事にしようという心理が働くのです。
 
新潟県の「著莪の里ゆめや」では、お食い初めプラン「百日祝い(ももかいわい)」というプランが人気です。プラン説明には、お食い初めの由来「お食い初めの正式な料理のお膳は一汁三菜です。お赤飯、尾頭付きの鯛、鯛か鯉のすまし汁、煮物、香の物です。香の物には梅干しと小石が添えられました。石は歯固めの石、梅干しはシワがいっぱいになるまで長生きすることを願っての意味が込められています」という紹介を記載していただきました。また、特典としてお食い初めの料理(お子様のお料理)をゆめやよりプレゼントすることを明記しています。
 
発売開始以降、多くの反響を得ているプランですが、2、3家族そろって利用されるケースが多いようです。子供を大切に育てようとする親こそ、こういった日本古来からの伝統行事を大切にする風潮もあり、おもに新潟県内のお客様から問い合わせを多くいただくそうです。さらに、旅館の近くに弥彦神社があるので、お宮参りプラン「うぶすな」というプランも造成し、こちらも人気を得ています。
 
旅館に限らず、料亭や比較的高単価の飲食店などでも「お食い初め」の企画を見ることがありますが、「当館でできること」がきっちりと明示されているケースとそうでないケースがあります。大切なことは「お客様からお食い初めできますか?」と言われて「できますよ」と応えることではなく「当館ではこのようなお食い初めができます」と先に明示しておくことです。
 
お食い初めなどでのご利用は通常の企画よりも「手間」がかかることは間違いないですが、その「手間」が「おもてなし」となりお客様の心に残るのです。


2014.2

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2014年1月11日 おもてなしは商品である

2020年東京五輪開催を後押しした一言「おもてなし」。流行語大賞にも選ばれ、「おもてなし」という言葉がありとあらゆるところで見受けられます。本コラムをご覧の皆様の多くが、日々のおもてなしに精進されておられるかと思います。 ただ、「おもてなし」というと、心の側面ばかりに気を取られ、「おもてなし」と「成果」を同列に語ることがタブー視されていることも確かです。
 
「おもてなし」は「成果」と切り離して実施しなければならないという間違った認識が半ば常識化しています。客をもてなし、感謝されるだけで満足することなく、日々の経営に落とし込んで「成果」につなげなければ、「おもてなし」を継続することはできません。この場合の成果とは集客であり、リピーターのお客様の創造です。また、「おもてなし」をマーケティングにつなげなければならないのと同時に、「おもてなし」は自館の「商品」であることを認識する必要があります。
 
今の世の中、良いものはすぐに真似をされます。事実、当社のクライアント旅館で企画したネットプランなどは、多くの旅館に真似をされています。お客様との接点として重要なホームページもすぐに真似をされ、施設も良いものはどんどんと真似をされます。ただ、「人を介在したおもてなし」を真似することは不可能です。「おもてなし」とは目に見えない事象も多く含むので、簡単に真似をされることはありません。「おもてなしを追求していくことは非効率」と、考える方もいるかもしれませんが、非効率であるがゆえに簡単に真似されることなく、「おもてなし」の精神が館内に浸透し、マーケティングと一致したときには絶大な効果を得ることができます。
 
真面目に旅館経営をされている方ほど、お客様が減ってきているのは「自館のおもてなしが不十分だから」と考え、自館の見直しばかりに注力されるケースが多くあります。実際に「おもてなし」の改善が必要な場合もありますが、自館の良さがお客様に届いていないために、集客ができていないというケースも多々あります。
 
大切なことは「おもてなし」をぼやっとした心の話ではなく、お客様に伝わる「商品」にすることです。

当社のクライアント旅館である飛騨高山の本陣平野屋「花兆庵」&「別館」は両館合わせて55室の旅館ですが、年間平均客室稼働率90%を超え、年商11億円(内ネット売上2・8億円超)を誇っておられます。JTBの評価は17年連続90点以上、さらにネットエージェント口コミも常に満点に近い評価を得るなど「おもてなし」に優れた旅館ですが、「おもてなし」と「マーケティング」の融合がうまく機能しており、「成果」につながっているのです。
 
2月に、本陣平野屋の女将さんもご講演いただくセミナーを開きますので、「おもてなし」を「成果」につなげようとお考えの施設様はぜひご参加くださいませ。


2014.1

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2013年12月11日・21日合併号 真っ当な表示がウリに?

  食品「誤表示」(偽装)の問題は収まる兆しが見えません。旅館で新料理を企画する際は、必ず調理場に安定的に供給できるか、表示に問題はないか、海産物の場合は、時化などで該当食材が仕入れられないときの代替食材の見込みは立っているかなどを確認します。さらに、仕入れにくい食材ならば、お客様の宿泊予約を「3日前まで」などと限定し対応しています。  
そもそも、歴史的な背景を考察すると、「日本の料亭や料理屋には元々、『メニュー』が存在しなかった」という事実があります。つまり、料亭や料理屋はお客様に「旬」の食材を最高の状態で召し上がっていただくことが至上命題であり、四季折々に「旬」が変わる日本の市場では、固定的なメニューを作ることができなかったとも言えます。
 
お客様は「メニュー」ではなく、その店や宿を「信用」して、来店されます。しかし、欧米系の「ホテル」が日本に進出してくると、欧米のお客様たちが「メニュー」を求め、それに応じて「決まったメニュー」を提示するようになったというのが通説です。
 
そうすると、「メニュー」はどうしても固定的になり、「旬」を考えずに、通年手に入る食材をベースに考えられるようになります。元々「旬」を大切にする日本の料亭などには馴染まないやり方です。
 
春夏秋冬、季節の食材をふんだんに使うことを前提とした「料理」の場合、事前にメニューを提示することは難しいを通り越して、不可能に近い。事前にメニューを固定すると、「旬」のものを使えなくなってしまうからです。
 
そうかといって、今の時代、お客様が事前に「食べたいもの」を選ぶというニーズが存在しますので、メイン料理だけ「○○牛」や「○○漁港直送のあわび」などと記載し、そのほかの前菜からデザートまでは記載しない。または、記載しても「季節に応じてメニューが変わる可能性があります」と付け加えるケースが増えてきています。
 
ただし、当日のメニューは「どこの、どのような食材かを、お客様に知っていただいた方が美味しく召し上がっていただける」ということで、お品書(メニュー)とともに料理を提供しているケースが多くなっています。
 
事実、当社のクライアント旅館では、昼過ぎに料理長や調理場から、本日の夕食のお品書きをフロントなどに送ってもらい、PCに打ち込んで宿泊人数分をプリントアウトし、お客様に提供するという一連の流れをよく見ます。
 
そういった一連の流れが「当たり前」の世界を見てきているので、「ホテルではそうではないのか?」と本当に不思議に思えます。
 
売るために「嘘」をつくことはまかり通りません。多くの真面目に料理に向かい合っている宿は、今こそ料理に対する思いを世間にアピールするチャンスと捉え、真っ当な表示を心がけていきたいものです。

2013.12

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2013年11月11日 Webでも団体受注を!

  この秋の皆様の宿の稼働状況はいかがでしょうか?
 
「伊勢、出雲、富士山、北海道などの特定地域を除き、団体旅行が例年にも増して減ってきている」というのが、全国をまわって見聞きした実感です。団体から個人旅行へのシフトといわれて久しいですが、いよいよその動きが加速度的になっています。
 
先日も弊社クライアント旅館の経営者と「団体が減って、個人旅行が増えると宿泊単価は上がるが、飲料などの付帯売上が上がらず、結果的に総売り上げが下がってしまう」という相談を受けました。ただ、過去のような団体旅行隆盛の時代の再来はありえないので、もう一段階、個人客が喜ぶ飲料や売店商品の品ぞろえを見直そうという話になりました。施設規模に関係なく、全国の施設でこういった話が多々あるものと思われます。
 
そんななか、群馬県水上温泉の「松乃井」では、Webからも団体や小グループを獲得しようと、団体向けのホームページを新たに立ち上げました。従来の個人客の知りたい情報だけではなく、宴会場の広さや会議室のスペックなどを細かく掲載しました。さらに、団体向けの企画商品として、
①団体プラン「基本プラン」
②「人気団体プラン」今夜は無礼講!飲み放題プラン♪ナ・ナ・ナント!源泉湯の宿が厳選したワインも飲み放題♪♪
③「幹事さん!お任せ下さい松乃井へ」☆6大特典☆あの頃の思い出を胸に♪同窓会プラン
④幹事様を応援♪研修・会議プラン
⑤パーティーパック「記念式典・授賞式・受賞記念・創立記念などに……」
⑥慶事プラン
⑦結納プラン
⑧ウェディングパック「披露宴&宿泊」
⑨趣味の会、イベント、オフ会パック
⑩女子会、ママ会グループプラン☆男子禁制
⑪ゼミ&合宿パック
⑫「松乃井の団体スキーパック♪♪」
⑬地球と遊ぼ♪「団体」アドベンチャープラン♪
――と、松乃井を使ってご旅行いただけるあらゆるシーンを想定し企画を造成いただきました。
 
結果、これらの団体グループプランにピッタリ当てはまりご予約いただくケースもあれば、「これだけ団体プランが充実しているなら、この旅館はきっと私たちの要望に応えてくれるに違いない」と問い合わせいただき、ご予約されるケースも多いとのことです。
 
この団体ホームページを立ち上げて、早1年が経とうとしておりますが、毎月継続的に小グループや団体を受注されています。しかも、この団体ホームページの良いところは、エージェントを介さないので手数料が発生しないということ。値段の叩き合いにならないので、団体であっても高単価な宿泊をキープできるということです。もちろん、さまざまな交通機関を含めたご予約はイチ旅館ではできませんが、その他の団体旅行はエージェントを介さないケースが増えています。
 
時代とともに予約経路は変わっていくものですので、この機会にWebでの団体受注という取り組みを考えてみられてはいかがでしょうか?

2013.11

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2013年10月11日 1人旅プラン、静かに浸透中

  全国を出張していると、1人旅らしき人を新幹線や飛行機の中でよく見かけます。旅館への1人旅というと、以前は受け入れを敬遠される宿が多かったと聞いています。ただ最近では、その発想自体がまったくの時代錯誤になっています。 

当社のクライアント旅館で1人旅を受け入れている旅館は、すでに相当数の宿泊実績があります。宿に話を聞くと、「1人旅のお客様は、本当によく追加料理オプションを頼んでいただきます」とか、「1人旅のお客様なのに、おひとりで相当お飲みになってありがたいです」というように、1人旅への評判は上々です。

リアルエージェントのスペシャルプランでは、「2名1室でご宿泊されるお客様」というプランよりも、「1人旅のお客様」が泊る方が、総消費単価が高いというケースも多々あるそうです。しかも年齢層は幅広く、20―70代まで多様化してきています。
 
そんななか、「新潟・岩室温泉 自家源泉の宿 富士屋」では、多様な1人旅の企画を造成し、宿泊客より好評を得ています。富士屋にはシングルルームやツインルームなどがあり、それらの客室を、「温泉でのんびりしませんか。がんばる女性の1人旅」や「1泊朝食付きプラン~自家源泉の温泉でご湯っくり~」「働きマン応援ぷらん 体にやさしい朝食ブッフェ付」など1人旅でも属性の違うお客様向けにアレンジした宿泊プランを販売しています。
 
女性向けの1人旅では、プラン内容にエステの記述を入れ、スタンダードな1泊朝食付1人旅では朝食の自慢を強調しました。
 
ビジネス向けの1人旅プランでは、大浴場の営業時間を明記し、早朝に出発する場合には、通常朝食に変わって、おにぎり弁当を用意するなど配慮しています。それぞれの客層が「あったらいいな」スをプランにしています。
 
これによって1人利用のお客様が、「この旅館は1人旅のお客に対し、ウェルカムなんだ」と安心して予約してもらえます。
 
旅館側としても繁忙日などは、料金を高くしたり、受け入れそのものを止めたりして、経営としての利益は求めていってよいものと考えます。
 
紹介した事例は、シングルやツインの部屋タイプですが、和室や露天風呂付き客室でも、1人旅プランを造成しているケースがあります。
 
とくに1人で露天風呂付き客室に泊ると、その旅館の2名1室料金よりも、はるかに高い料金設定になってしまいますが、「1人で露天風呂付き客室に泊ろう」と思って予約するお客様にとって「値段」は検討材料にならないようです。
 
「うちの旅館は2名1室以上で365日満室になる」という場合、1人旅プランの造成は必要ありませんが、平日に2名1室料金を下げざるを得ない、という状況に陥っている場合、価値ある1人旅プランを検討してみてもよいのではないでしょうか?

2013.10

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2013年9月11日 スタンダードプランは大切に

  先日ある旅館で「たくさんプランがあるなかで、なぜうちの旅館はスタンダードプランが一番良く売れるのでしょう」という質問を受けました。
 
旅館を利用するお客様の年齢層も高く、1人当たりの平均単価が2万円を超える旅館です。当社のクライアント施設のなかで、このような属性の旅館ではたくさんプランを作ってもスタンダートプランで予約するお客様が多いことも確かです。
 
では、他のプランに魅力がないのか、というとそうではありません。「色々あってよく分からないが、この旅館に行きたいので、とりあえず基本プランで予約する」という心理が働いているものと思います。
 
例えばコーヒー店のスターバックスでは、ラテやフラペチーノなどたくさん種類がありますが、注文する人のほとんどは「本日のコーヒー(普通のコーヒー)」です。
 
ハンバーガー店のマクドナルドでも、ビックマックやチーズバーガーなどの定番商品に加え、期間限定商品なども投入していますが、やはり「ハンバーガーで」という注文がされています。
 
お子様セットの商品は「ハンバーガー」+「ジュース」+「おもちゃ」で、この「ハンバーガー」がシーズン限定の特別なハンバーガーであったことは見たことがありません。
 
「飲食店と旅館の商材は違う」と思われるかもしれませんが、本質は同じところにあります。
 
仮に、スターバックスの商品が「本日のコーヒー」のみ、マクドナルドの商品が「ハンバーガー」のみであったなら、あれほどの繁盛ぶりはなかったことでしょう。
 
つまり、たくさんの商品があり「行ってみよう」と思うが、注文するのは無難なスタンダード商品、というお客様が日本人には多いのです。年齢層が上がるほど、その傾向は強くなるようです。
 
それゆえ「スタンダードプランばかり売れる」ということを悲観することはありません。逆に、その旅館の「基本」がお客様に評価されていると認識すべきです。
 
事実、同じ日に安売りプランが出ていても、なぜか単価の高いスタンダードプランをお客様が選ばれるということがあります。「安さには何か訳があるに違いない。だから、基本プランを予約しよう」と考えるお客様を集客できているので、結果は良し、とすべきでしょう。
 
ただ、「スタンダードプランしか売れないから、その他のプランは作る意味がない」というわけではなく、スターバックスやマクドナルドと同様に、商品で「魅せる」ことも重要です。
 
また、多様なお得プランを展開していても、「基本」が分からなければ、その「良さ」もわかりません。
 
基本料金が不明確のまま、「お得だ」と言われても検証のしようがありません。
 
宿の「基本プラン」が、キチンと機能しているかどうかについても、この機会に検証されることをオススメします。


 



2013.9

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2013年8月11日・21日合併号 アクティビティは詳細表記

  ハイキングやアクティビティができる宿(そういうスポットが近くにある宿)が人気です。LCC(格安航空会社)に乗ると、リュックサックを持った中高年の「個人」の群れをよく見かけます。
 
以前のように添乗員の旗についていく、募集型旅行客を見ることは少なくなりました。本当に個人が自由に旅行する時代になったと思うものです。
 
ただ、ハイキングやアクティビティ系の体験は、お客様への伝え方が難しい商品です。送迎や観光付のプランにしてしまうと、旅行業法に抵触する可能性もありますし、事故などの保険対応も頭に入れておかなければなりません。
 
しかし、公式ホームページなどで「アクティビティができる」と表現するだけでは、お客様に伝わらないケースもあります。
 
兵庫県淡路島の「淡路島海上ホテル」では、釣場まで徒歩5秒という地の利を生かした、「ホテル目の前で釣り三昧プラン」が人気です。
 
このホテルは目の前に桟橋があり、そこで宿泊客が釣りをできるようになっていましたが、チェックインした後のお客様から「釣りができるのであれば教えてほしかった」という声がよくあがっていたそうです。ホテルの公式ホームページには、桟橋で釣りができることをうたっていましたが、プランばかり見ているお客様が多く、ホームページに釣り情報を掲載するだけではうまく伝わっていませんでした。
 
そこで釣りプランを造成したところ、このプランでの予約が一気に増えたということです。プラン内容は、ホテルより5秒で行ける「目の前の桟橋」で、釣りができる宿泊プランであること。毎週1回、ホテルスタッフが撒き餌でお魚を集めているので、「よく釣れる」と評判であること。さらにリピーター客にも大人気であることを伝えるというものです。
 
特典として、①釣りセット(さお・エサ・仕掛け)800円相当を無料サービス②釣った魚の料理代(通常500―2千円)を無料サービス③大型魚を釣り上げた場合、希望に応じて公式ホームページ&宿の釣掲示板に掲載する――という内容になっています。
 
さらに、自宅からクーラーボックスを持参すれば、釣った魚を持ち帰ることもでき、朝釣りもOKです。ホームページには、宿泊客が朝の5時台から朝釣りを楽しんでいるという、ホテルスタッフの目撃情報も掲載しました。
 
ここまで詳しく内容を掲載したことで、予約いただくお客様も釣りという行動をイメージしやすいのか、本プランは販売開始以来、息の長いヒット商品になっています。
 
釣りに限らず、ハイキングもアクティビティも旅行動機の重要な要素です。体系的に宿のホームページなどに情報を整理すると共に、お客様の目につく「プラン」のなかにそれらの情報を付加したプランを造成することも、販売増加やPRに効果的です。

 



2013.7

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2013年7月11日 宿泊産業もエコの時代へ

  地球温暖化問題や東日本大震災以降の電力状況のひっ迫も加わり、国民の「エコ」への意識は非常に高まっています。国が推進するスーパークールビズへの認知も広がり、この時期、新幹線や飛行機に乗っても、ネクタイ姿の人に出会うことは、年々減ってきているように思います。
 
きちっと背広を着て、クーラーを最高に効かせた環境で仕事をすること事態が、いまや社会通念上は許されないような環境になってきています。
 
そういうなか、旅館業でもエコを取り入れた企画プランが好調です。世界自然遺産「知床」に近い宿・しれとこ村つくだ荘では、世界自然遺産「知床」の自然を守ろう、という宿泊プランを造成しています。
 
「ちょっぴりガマンをしていただく代わりに、特典の付いたエコプラン」というのが宣伝文句です。内容は「歯ブラシ」は付かない。チェックアウト時間は、早めにして電気代を削減するため、通常午前10時を9時に設定。そのことに協力いただいた御礼として、ちょっぴりプレンゼントを付ける、というものです。ただ、販売単価はスタンダード料金で、値下げなどは行っていません。
 
旅館やホテルに泊る理由として、日常生活を忘れ、ゆっくり過ごすのが目的なので「エコ意識」などお客様に持っていただくことは良くない、という意見も片方ではあると思います。
 
ただ、東日本大震災以降、明らかにお客様の「エコ」に対する認識が変わってきており、チェックイン時に部屋に電気を付けていたらお客様から「もったいない!こんな時代に何を考えているの」というお叱りを受ける。部屋にペーパータオルを置いていたら「エコじゃないから、普通のタオル持ってきて」と注文を受けた、という話を全国で聞くようになりました。少々大袈裟かもしれませんが、「旅行」という非日常の中でも、守るべき自分のスタンスは崩さない、というお客様が増えてきていることは間違いありません。知床の「しれとこ村」でも、販売当初は「お客様に不便を強いるプランが果たして売れるだろうか」と懐疑的な想いで販売をスタートされましたが、予想以上の売れ行きに驚いておられます。
 
世界自然遺産の「知床」という観光地ならではのエコツーリズムの意識が、予想以上の成果に結びついた一因でしょうが、そういったエコが基本の観光地に「エコプラン」があることにより、お客様が「コレだ!」と思ってご予約いただいたケースもあるかと思います。
 
この旅館のケース以外でも、チェックイン時部屋の電気を消す、チェックイン時のクーラーを消す代わりに「特典」を付けるというエコプランも販売は好調です。
 
日本で昔からいわれた「もったいない」という精神文化を、今風にアレンジしたエコプランは、宿泊産業に対する好印象を広く認知させるためにも、もっと広がってもらいたいものです。
 



2013.7

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2013年6月11日 直前予約の締め切り時間

  今回は、特定の企画商品の話ではなく、企画した商品をいかに売りきるか、という話です。

先日、当社のクライアント旅館が、インターネット&直販強化を実行して、初めてのゴールデンウイーク(GW)を迎えました。
 
GW終了後、早速その結果が知りたくて「連休中にインターネットからご予約のお客様で、キャンセルやNO―SHOW(予約客が連絡もなく現れないこと)などの問題はありませんでしたか」と伺いました。
 
すると「インターネット経由で予約のお客様のキャンセルはほとんどなく、逆に旅行会社経由の予約の直前キャンセルが目立ちました」という回答でした。
 
以前は、「旅行会社経由の予約客は、キャンセルなどが少ない。逆にインターネット経由の予約客の方が、すぐにキャンセルする」という話ばかりでしたが、昨今はそのようなことはないようです。
  かつてのように、旅行会社の店頭で国内旅行を申し込むお客様は激減し、一方で自宅や職場などからパソコンで予約する人が増えたことが、ネット予約激増の一因でしょう。
 
ただ、最近の新しい傾向としては、ご主人が運転している車の助手席で、奥様がスマートフォンやiPadなどを利用して当日泊まる宿を検索し、予約するという旅行スタイルも増えてきているように思えます。
 
事前に「宿」を決めるのではなく、行った先で「宿」を決めるという消費行動です。
 
当社のクライアント旅館に本件を照会したところ、宿泊日当日に「今日、泊まれますか」という電話が多いという現場の声があがってきていました。
 
今回のGWもそのようなお客様が多かったということで、クライアント旅館にも「予約の締め切り時間」の見直しを行ってもらいました。
 
その旅館は、今まで当日の午前11時までしかインターネット経由の予約を受け付けていなかったのですが、料理内容などを明確に記載していないプランや、面倒くさくないプランについては午後5時までインターネットでの予約を受け付ける、というオペレーションに変更しました。
 
すると調理場からは「食材仕入れが間にあわない」、仲居頭からは「仲居の人繰りが大変だ」、予約課からは「その時間までネット予約を受け付けると、オーバーブッキングの危険が増える」という声があがってきました。私は当日予約が増えている時代背景などを説明しながら、なんとか理解を得て、皆さんに協力してもらいました。理想としては、当日までに部屋が満館になり、直前予約など必要ない、という状況が正論だと思います。ただ、現実問題として、直前キャンセルなどが存在する可能性は十分あります。
 
「当日の宿を予約する」というお客様の消費行動に対応することも、今後は必要な時代になってきました。
 
GWが終わり、一段落した現状で、「予約締め切りの時間の見直し」を検討されてみてはいかがでしょうか。
 



2013.6

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2013年5月11日・21日合併号 需要高い「マグロ」プラン

  今年の正月のことです。「青森県大間産のクロマグロが1匹1億5540万円の史上最高値で競り落とされた」というニュースがありました。
 
昨年付けたこれまでの最高値5649万円の2・8倍で、1㌔あたりだと70万円、握り一貫当たりの原価は4―5万円と驚きの価格です。ご祝儀相場でしょうが、日本人のマグロに対する情熱は、まだまだ冷めそうにありません。街の寿司屋でも「マグロ」を売りにしたケースはよくみかけます。
 
先日の弊社主催セミナーで、社長に講演いただいた群馬県水上温泉の「源泉湯の宿 松乃井」でも、売れ筋商品に「稀少!天然本鮪寿司&極上ローストビーフ&揚げたて天ぷら食べ放題♪ハーフバイキングプラン」があります。
 
プランの宣伝文句には「今や稀少となった〝天然本鮪寿司!〟がナ・ナ・ナント!食べ放題♪築地直送『天然本マグロ』を職人が真心込めて一貫一貫握ります。どうぞ思う存分食べ尽くして下さい!」とあります。築地直送の「天然本鮪」をうたった宿泊プランですが、松乃井の公式ホームページのトップページのフラッシュでも、大々的にマグロをPRして誘客に努めています。
 
実は、このプランを販売する前には、「群馬県でなぜマグロを出すの?」という話もあったようです。ただ、「お客様が食べてみたいと思う素材は何か」と考えたとき、日本人誰もが好むマグロの企画が始められたといいます。
 
結果は、群馬の山奥ながら、この宿泊プラン目当てに、多くのお客が押し掛け大ヒットです。しかし、だからといって、松乃井で地域の食材を使わないということではありません。現に「ぐんま地産地消推進旅館」にも認定され、料理には地元の野菜などを積極的に活かしています。
 
当館の地産地消の「地」は、「地方の地」ではなく「地球の地」です。地球上の美味しい食材をお客様に召し上がっていただくことが当館の目標です、という旅館もあります。
 
地産地消というと、どうしても使い古された感があり、「うちの地元にはお客様から求められる食材はない」といわれる人もいますが、松乃井の地産地消は、「使える地域の食材は使いながら、お客様が食べたい!と思えるような食材は仕入れてでも売る!」という姿勢の「地産地消」です。
 
こだわりを追及して、狭いマーケットに存在するお客様のみを対象にした客室規模の小さな旅館と違い、松乃井は200室以上の客室を毎日販売していかなければなりません。「小さく絞る」という戦略は不適合です。
 
大きなマーケットを狙うために、「誰もが食べてみたい!」=「誰もが泊ってみたい!」という企画を考える必要があります。そういった意味で、マグロだけに限らず、「多くのお客様が食べたい!」と思っている素材を料理に活かすことも重要な戦略といえるでしょう。
 



2013.5

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2013年4月11日 赤ちゃん連れ旅行に着目

  最近のママドル(ママのアイドルの略)ブームではありませんが、子供を産んでも積極的に社会に出て行こう、という流れがあります。街中を歩いてもベビーカーを押しながらショッピングを楽しむ子供連れ家族を多く見るようになりました。
 
レストランでも「お子様対応」に注力している店は、子供専用料理のバリエーションを広げたり、お子様椅子を用意するなど、子供連れのファミリー層をうまく取り込んで繁盛させています。
 
旅行もかつては「赤ちゃんの首がきちんと座る前まではもってのほか」という風潮があったようですが、最近は「そんなに小さな子供を旅に連れて大丈夫」かと、こちらが心配になるほど、小さなお子様連れの家族を全国各地でみかけます。
 
そんなニーズをうまく取り込もうと、長崎県雲仙温泉の「東園」では「3歳児まで無料、赤ちゃん温泉デビュープラン」という企画を造成しました。通常の宿泊では3歳以下のお子様について1500円の入館料が必要なのですが、このプランでは無料にしました。さらに、お部屋食の確約と特典がついています。また、赤ちゃん連れ旅行に便利な「赤ちゃんグッズ」の貸し出しもしています。内容は、①部屋にオムツ専用のゴミ箱用意②子供用の浴衣③子供椅子貸し出し④子供用食器貸し出し⑤子供用ハブラシセット⑥子供用スリッパ⑦冷却用シート⑧爪きり⑨加湿器⑩子供用布団――と幅広くそろえています。
 
赤ちゃんプランの企画を検討する時には、「うちの旅館は宿泊料金も雲仙の他の旅館に比べ安くないですし、比較的年配の方にご利用されているので、赤ちゃんプランを作ってもヒットしないのでは」という社内の声もありました。ただ、「新しいお客様層を積極的に開拓しよう」ということと、「どんなお客様層がお越しになられても、東園はキチンとしたおもてなしができる自信がある」ということで、プラン販売をスタートしました。
 
販売を始めると反響の大きさは予想以上でした。赤ちゃん連れのお客様が多く訪れ、想定していた組数以上のお客様に、一時は子供用布団が足りなくなる、という状況になり、まさに嬉しい悲鳴をあげることになりました。実際にお泊りになったお客様からも「こんなプランを探していたんですよ」「しっかりとした赤ちゃんプランを作っておられるので、安心して旅館に来ることができました」など、大変感謝された声をいただきました。
 
お客様にとっては、自分の子供との温泉デビュー旅となり、人生のなかでの想い出に残る旅となるでしょうし、子供が大きくなった時に「あなたが赤ちゃんの時に、東園という旅館に行ってね」なんていう想い出話もできると思います。
 
旅館業は、お客様からお金をいただきご宿泊いただいたうえ、感謝もされるという素晴らしい商売です。赤ちゃん向けプランはそんな旅館業の本質を体現したプランの一つではないでしょうか?


2013.4

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2013年3月11日 料理長との会話も商品

  アベノミクスによる円安&株高が進み、株式保有者層の資産価値が上がり、心理的な効果で高額商品の販売回復が百貨店などで見られる、という記事がありました。

旅館業においても、高額価格帯のプランの売れ行きが以前にも増して好調です。簡潔サービス業、とくに旅館やホテルでは、不景気のときは真っ先に影響を受け、好景気の影響が表れるのは最後と言われることも多いですが、適正な商品を適正な販路で販売している旅館は、私の知る限り、その問題はありません。
 
新潟県岩室温泉の「著莪の里ゆめや」では、ネット&直販経路を適正に整備したことで、高額価格帯プランの売れ行きが絶好調です。
 
なかでもとくに人気を集めているのが、季節限定のゆめやカウンター席「桜庵」で楽しむ板前料理というプランです。
 
このプランは夕食を、ゆめやのカウンター席「桜庵」で楽しんでいただくという趣向ですが、プラン表記には「板前がお客様の目の前で料理を仕上げて参ります。板前との会話もお楽しみくださいませ」と記載されています。
 
実はこのプラン、繁忙時期に仲居さんの手が足りず、料理長に直接料理を提供してもらうことにより、人手の問題を解決しようと造成した商品でした。
 
しかし、プラン販売後、お客様から予想以上の予約をいただき、ゆめやと「まさかこんなに売れるとは……」と驚いた企画です。
 
このプランがなぜそこまで好調なのかを分析すると、ゆめやにお泊りになるようなお客様は普段から旅慣れており、少し違った旅館の楽しみ方をしたいのではないだろうか。また、部屋で2人きりで食事をするよりも、板長が間に入ることで料理の知識や、旬の食材などの見識も深めることができるので、「体験」という要素も旅に求めているのではないだろうか、という結論に達しました。
 
事実、このプランはネット&直販限定の商品として販売を開始したのですが、お客様のニーズに合致したせいか、旅行会社からも「カウンター席プランで予約をお願いします」とよくお電話をいただくようです。
 
一般のお客様にとっては、「女将と会話をする」と同様に「料理長と会話をする」ということだけでも感動されます。
 
旅館側が思っている以上に、女将や料理長の存在はお客様にとって「価値のある存在」なのです。
 
「うちの旅館はカウンター席がないから……」という話ではなく、このプランが売れた本質は、料理長が「あなたのために料理をします」ということです。「料理長からの一品を、料理長がお持ちします」といったコンセプトのプランも可能です。
 
プロの知識と腕を持つ料理人が包丁を使って料理をする、という当たり前のことをお客様に伝えることにより、結果的に集客につながるという良い証拠のプランと言っても問題ないでしょう。


2013.3

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2013年2月11日 信仰や風習を取り入れる

  今年は出雲大社の「平成の大遷宮」と伊勢神宮の「式年遷宮」の年でもあり、旅行業界や出版業界で遷宮の話題が多く出ています。日本には古くから「出雲詣で」や「お伊勢参り」の言葉が存在する通り、神社仏閣に対する信仰があり、それが文化や経済と結びついています。昨今のパワースポットブームとも合致し、出雲や伊勢は例年にも増してにぎわうでしょう。
 
私たちはその地方で商いをしていないので、関係ないという話ではなく、地方には独自の信仰や文化が根付いているものです。それをうまくPRし、お客様に喜んでいただいているケースが多々あります。伊豆天城吉奈温泉の「御宿さか屋」では“1200年の霊泉~子宝祈願のお参り・お礼参りに”と、「子宝の湯プラン」を展開しています。吉奈温泉は元々「子宝の湯」として有名で、江戸時代には徳川家康側室のお万の方も噂を聞きつけ湯治に訪れ、頼宣と頼房の二子を得た事で全国的に知られるようになったといいます。そんな子宝の魅力を伝えようと、善名寺のご祈祷の手配を代行し、栄養士の女将がプロデュースした特製「子宝料理」を用意するなど、盛りだくさんのプランとなっています。ちなみに「善名寺」は、西暦724年建立の曹洞宗寺院でしたが、江戸時代にお万の方の寄進により日蓮宗に改宗した名刹です。
 
西洋式な考え方をすれば、「エビデンスを出せ」や「民間信仰」と言われてしまう話かも知れませんが、冒頭の遷宮の話にあるように、そこには「祈りの文化」があります。ただ、それを伝え続ける努力をしないと、文化そのものがすたれていってしまいます。実際、このプラン発売後には、従来以上に全国から子宝を望まれるお客様が増え、子宝を授かったケースも多々あるそうです。また、プランだけではなく、宿の公式ホームページにも「子宝のいわれ」を若女将が体系的にまとめ、好評を得ているそうです。プラン名には「子宝祈願のお参り・お礼参り」にとのことですから、お子様を授かった暁には「お礼参り」に来られることでリピーターにもなっていただけます。そのニーズに応え、赤ちゃんの温泉デビューや、お礼参りに「露天客室&幼児1名無料プラン」という宿泊プランも販売し、こちらも好評を得ています。
 
子宝に限らず、日本各地の神社仏閣には、それに応じた御利益が伝えられています。また、それと温泉の効能を組み合わせることにより多くの派生した物語を紡ぐことが可能です。そういうことを求めての旅も、日本の文化です。それらを求めて旅をする人の価値観は、ただ単に価格が「安い」「高い」や、料理がどうこうという話ではありません。
 
旅館が地域に根差して存続することは、地域に残る歴史ある信仰や風習を次代につなぐ役割を担っていることでもあります。皆様の地域でも、そういった信仰や風習を見つめなおし、宿泊プラン化されてみてはいかがでしょうか?

2013.2

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2013年1月11日・21日合併号 “食事制限”も工夫で開拓

  前回に引き続いて「シニア市場攻略」の話題。ある旅館の女将さんが経済会の会合に出席したとき、企業をリタイアされた方から「旅館に行きたいのだけれども、食事制限があるので、旅館の食事は食べられないのだよ」といわれた、という話を伺いました。長年企業の第一線で尽力されてきた方々は、当時の接待事情等もあり、糖尿病や腎臓病を罹患され、さらに塩分やカロリー制限まで受けておられるようです。
 
ただ、そんな方々も日本の伝統文化である旅館で、温泉に入ってのんびりしたい、女将さんとの会話を楽しみたい、というニーズは存在します。旅行に行 く時間も、費用捻出も可能であるにも関わらず「食事」がネックとなり、せっかくの機会を逸しているとのこと。非常に残念な話で、旅館業界として取り組む課題であると考えております。
 
そんな方々のニーズに応えるため、新潟県村杉温泉「風雅の宿 長生館」では【減塩&量少なめ対応可】健康づくり応援!山海和食会席プランを造成しています。長生館は健康に配慮したメニューやサービスを提供できる「健康づくり支援店」として新潟県から認可を受けており、その特徴を活かしたプランになります。
 
「山海和食会席プラン」(長生館の基本料理コース)の内容は夕食・朝食を、①量少なめサービス②塩分控えめサービス③御飯を「おかゆ」に変更できる――などアレンジ可能というもの。量が少なくなっても、料理の工夫は同じなので、通常料金と差異なく販売しています。
 
販売開始すると、腎臓病を患っておられる方々の旅行で大変好評価を得ており、そのことが地元ラジオで放送されると、同じ腎臓病患者の方から電話で涙ながらに「こういった企画を待っていたんです!」と喜びの声とともに予約いただくなど各方面から大変な反響が寄せられています。
 
元々、長生館には全国トップレベルのラジウム含有量を誇る源泉があり、学会でも「健康になる」という評価を受けていることから、温泉には相当のこだわりを持っています。全27室の小規模旅館ですが、社内には温泉ソムリエが専務をはじめ5人、温泉入浴指導員7人が在籍しており、「健康」というキーワードで嘘偽りなく営業しています。
 
そのような館のコンセプトに基づいて、料理長協力のもと販売開始したプランですので、「食事」が理由で旅館に来ることができないお客様を取り込んでいることは、マーケティングストーリーのうえでも成功しているといえるでしょう。
 
もちろん、食事制限なく旅行できるお客様が旅館に来ていただくことは重要ですが、現在の日本の“現状”を正確に認識したうえでのマーケティングも重要であり、「食事」の改善や工夫で「旅館に来ることを諦めていたお客様層」を開拓できるのであれば、今後の館の方向性を考える意味でも重要な意味を持っているのではないでしょうか?

2013.1

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2012年12月11日・21日合併号 シニア市場の攻略

最近、新聞紙面や雑誌特集でも「シニア市場を攻略しよう」という話題がでてきました。若年層人口の減少と所得の減少を鑑みて老年層の人口ボリューム、貯蓄を狙え!という趣旨の記事が大半です。

旅館業界においても、「シニア市場攻略」というテーマは避けて通れません。尖閣問題で揺れる昨今の現状からも、「国を超えて遠くから来ていただけるお客様」“ばかり”を過度に追うとリスクが高い……という命題が証明された感があります。それよりも、日本国内に眠っている「シニア層」をターゲットにする方がより安定的な集客を見込める、と改めて実感された方も多いのではないでしょうか。

では、そのシニア市場に対して、どのような対処をすればよいのか。バリアフリーの施設にするのか、シニア向けの料理を開発するのか、シニアコミュニティーにアプローチするのかなど、多々実験的な取り組みが行われています。

ただ、「シニアだから、こうだ」という論理は通用しません。シニアにも「幅」があるのです。一例でいうと料理。シニア向けの料理といって、「イモやかぼちゃ、五穀米などの健康に良い料理」を旅館側が考え提供しても、当のご本人たちにとっては「戦争の記憶(貧しい時代に食べた記憶)があるので、好ましくない」という話はよく聞きます。

旅館側が天ぷらは油ものだからあえて出さない、としても「旅館に来たら天ぷらはでるだろう」ともいわれてしまいます。逆に上記のような取り組みがピッタリとハマリ「こんなプラン待ってたんだよ」とおっしゃってご満足されてお帰りになるケースもあります。

群馬県老神温泉「仙郷」様で、「【60歳以上の方はお得!】ありがとう。シニアプラン!」を造成いただきました。プランの特徴として、通常料金よりもお得で可能な限り、エレベーターに近いお部屋をご用意(露天風呂付客室を除く)、ご希望によりお部屋に高座椅子ご用意、ご希望によりベッド(2床限定)手配というもの。さらに、「ご予約について」の文章に、「60歳以上のお客様が1名様以上でお申し込みください。
(例)お父様63歳、お母様58歳、娘様35歳の計3名様でのお申込みなどはOKです♪」と記載いただきました。

ポイントは「あなたのことを気遣いますよ」というPRと、「3名以上で予約してね」ということです。あえて、年齢制限を設け、予約可能例も記載しました。年齢の高い親子(家族)旅行を狙ったのです。本プラン販売開始後、ご両親と息子さんか娘さんという単位での予約が増えてきた、という嬉しいご報告もいただいております。ただ、このプランがすべてのシニアの方のニーズを満たしているプランだとは到底考えていません。

しかし、「シニア市場の“ある層”にはウケル」ということが判明しましたので、今後もプランのブラッシュアップを進めたいと考えております。

2012.12

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2012年11月11日 量より質のチカラ

一昔前のテレビ番組で、ある旅行会社担当者が旅館の下見に行き、出された夕食について料理長に「もう1品付けてくれないか」と交渉している場面がありました。その担当者は「あと1品付けることが仕事」と思っているようでした。 

当時から「時代感覚がズレている」と思いましたが、料理の数を1品増やすことがお客様満足につながる……という時代もあったことは驚きです。 
 
旅館の料理といえば、「食べきれないほどの量」&「残すほどの量が良い」という時代もありましたが、昨今のお客様すべてがそのような料理を求めているわけではありません。一部に、そのような料理を求める方々もいますが、その数は年々少なくなっており、今後も減っていくと思います。 

  そんななか、岐阜県の飛騨高山にある本陣平野屋花兆庵様では、【美味求真会席】~上質の味覚を少しづつ~」という宿泊プランを造成しています。もちろん、団体客対象の企画商品ではなく、個人旅行のお客様をターゲットにしたものです。 
 
プランは極上の食材で量より質を重視した料理内容です。説明書きにも、「本当に良いもの」にとことんこだわり、調理長と女将が吟味し「美味」を追及した、リピーターのお客様に“最も支持される”花兆庵自慢の会席は“上質を知る”旅慣れた方にこそお召し上がりいただきたい逸品です。と明確に料理内容とターゲットを記載しています。

美味求真会席のプラン掲載文章には、料理メニューまで詳細に記載する徹底ぶりです。さらに、プランには記載されていませんが、実際に訪れたお客様が料理を食べる際には、あるちょっとした「工夫」がされており、その評価も高いといいます。
 
このプランでは通常の会席料理と比べ、原価や手間もかかり板場に負担を強いることになるので、花兆庵様では美味求真会席を、通常の会席料理にプラス4200円の設定で販売しています。それでもお客様がこの宿泊プランを選ばれるところに、時代のニーズが感じられます。 
 
旅館の料理は量が多くて食べきることができない。旅館の料理は質が悪いので、というマイナスイメージを逆手にとり、料理の量は少ないけれども、質は最良(美味)というコンセプトのこのプランは、発売当初はインターネットおよび直販企画商品だったのです。
 
それが旅行会社担当者の目にとまり、今では旅行会社向けの企画商品としても、絶好調な販売を記録しています。

プランの発売当初は、「量が少なすぎるのではないか?」などの不安もありましたが、実際に販売してみるとリピーター客にも大好評とのこと。 
 
今では花兆庵様の売れ筋プランの1つになっています。お客様のニーズを顕在化させ、真摯にそのニーズに取り組むことがヒット商品を生む要因になる。花兆庵様の取り組みがそれを実証しています。

2012.11

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2012年10月21日 誰もが喜ぶ企画力を

団体旅行から個人旅行へのシフトと言われ続け、宿の集客スキームが旅行会社重視から直販&インターネット販売重視に変動しています。当然お客様に販売する旅館の「商品」も変化していることは確かです。 
 
もはや以前のように「1泊2食和室で○○円」という商品は、よほど宿のブランド力がない限り売れません。お客様に宿の魅力を伝える企画商品を造成しなければならないのです。 
ただ、ネット販売の様々な手法(SEO、SEMなど)ばかりに頼り、結局売上が伸びても利益が追いつかないというケースも、日々のコンサルティング活動においてよく散見します。最近はfacebookさえやっていればなんとかなる!というおかしな風潮も重なり、本来一番力を入れるべき、宿の「商品化」がなおざりになっています。
 
ネットで売る、旅行会社で売る、直販で売る、という前段階で、お客様に「自分達の宿が何を提供できるか」を明確にした企画商品を造成することが必要なのです。
宿内部の料理、温泉、接客などの“おもてなし”に力を入れることは当然必要ですが、宿の“おもてなし”を体現させ、お客様に伝えていくことが求められているのです。数々の販売強化手法はありますが、そんな時代だからこそ「商品力の再考」が求められているのです。そんな商品力を強化した事例を、これから皆様にご紹介していきたいと考えてりおります。
 
長野県の上諏訪温泉にあるホテル鷺乃湯様では、「★酒蔵五蔵呑み歩き★源泉湯めぐりプラン」という宿泊プランを造成しています。このプランは上諏訪地域の酒造5軒の飲み歩きと、地域で仲の良い旅館の湯めぐりがセットになった宿泊プランです。
経営者の方は「地域が盛り上がるには旅館単体が利益を上げるのではなく、地元地域にお金が落ちる仕組みが必要だ」ということでこの企画商品を考案しました。
 
このプランを造成する前でも「お客様が勝手に酒蔵をめぐる」という消費行動はあったそうなのですが、残念ながらそれほどの認知度もなく、酒蔵巡りをされたお客様が「良かったよ~」と仲居さんに話をする程度だったとか。
その声を聞き、「そんなにお客様の評判がいいのであれば、うちの旅館が間に入って酒蔵巡りプランを作ろう!」という話になり各酒蔵との交渉の末、旅館の宿泊プランとして販売するに至りました。

ホテル鷺乃湯様が素晴らしいのは、それを自館だけの宿泊プランとするのではなく、地域の旅館にも使えるように広げたことです。酒蔵巡りと湯巡りができるプランとあって各旅館でもこのプランが大ヒットし、2年目以降は旅行会社の企画商品にも掲載されるようになりました。

この商品のヒットのポイントは「お客様の声」を的確に拾い、より大きな販売網を地域のチカラを巻き込みながら構築したことにあります。お客様だけが、旅館が良いという話ではなく、消費に関わる誰もが喜ぶことが繁盛への道になるのです。

2012.10.21

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