• 連載コラム 繁盛旅館への道~売れる商品企画の作り方~
    Column
  • 2019年11月05日

    2013年1月11日・21日合併号 “食事制限”も工夫で開拓

    前回に引き続いて「シニア市場攻略」の話題。ある旅館の女将さんが経済会の会合に出席したとき、企業をリタイアされた方から「旅館に行きたいのだけれども、食事制限があるので、旅館の食事は食べられないのだよ」といわれた、という話を伺いました。長年企業の第一線で尽力されてきた方々は、当時の接待事情等もあり、糖尿病や腎臓病を罹患され、さらに塩分やカロリー制限まで受けておられるようです。

    ただ、そんな方々も日本の伝統文化である旅館で、温泉に入ってのんびりしたい、女将さんとの会話を楽しみたい、というニーズは存在します。旅行に行 く時間も、費用捻出も可能であるにも関わらず「食事」がネックとなり、せっかくの機会を逸しているとのこと。非常に残念な話で、旅館業界として取り組む課題であると考えております。

    そんな方々のニーズに応えるため、新潟県村杉温泉「風雅の宿 長生館」では【減塩&量少なめ対応可】健康づくり応援!山海和食会席プランを造成しています。長生館は健康に配慮したメニューやサービスを提供できる「健康づくり支援店」として新潟県から認可を受けており、その特徴を活かしたプランになります。

    「山海和食会席プラン」(長生館の基本料理コース)の内容は夕食・朝食を、①量少なめサービス②塩分控えめサービス③御飯を「おかゆ」に変更できる――などアレンジ可能というもの。量が少なくなっても、料理の工夫は同じなので、通常料金と差異なく販売しています。

    販売開始すると、腎臓病を患っておられる方々の旅行で大変好評価を得ており、そのことが地元ラジオで放送されると、同じ腎臓病患者の方から電話で涙ながらに「こういった企画を待っていたんです!」と喜びの声とともに予約いただくなど各方面から大変な反響が寄せられています。

    元々、長生館には全国トップレベルのラジウム含有量を誇る源泉があり、学会でも「健康になる」という評価を受けていることから、温泉には相当のこだわりを持っています。全27室の小規模旅館ですが、社内には温泉ソムリエが専務をはじめ5人、温泉入浴指導員7人が在籍しており、「健康」というキーワードで嘘偽りなく営業しています。

    そのような館のコンセプトに基づいて、料理長協力のもと販売開始したプランですので、「食事」が理由で旅館に来ることができないお客様を取り込んでいることは、マーケティングストーリーのうえでも成功しているといえるでしょう。

    もちろん、食事制限なく旅行できるお客様が旅館に来ていただくことは重要ですが、現在の日本の“現状”を正確に認識したうえでのマーケティングも重要であり、「食事」の改善や工夫で「旅館に来ることを諦めていたお客様層」を開拓できるのであれば、今後の館の方向性を考える意味でも重要な意味を持っているのではないでしょうか?

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  • Vol.04 2013年1月11日・21日合併号 “食事制限”も工夫で開拓
  • Vol.03 2012年12月11日・21日合併号 シニア市場の攻略
  • Vol.02 2012年11月11日 量より質のチカラ
  • Vol.01 2012年10月21日 誰もが喜ぶ企画力を