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  • 2017年4月11日 旅行新聞新社

    “経営の無駄を省け”宿の成功事例など紹介 観光文化研究所 東京でセミナー

    観光文化研究所(大坪敬史社長)は2月20日、東京都内で旅館業経営者向け「【観光へき地・外国人観光客ゼロ】&【劣化設備】&【人材不足】でも…旅館を繁盛させる法大公開セミナー」を行った。セミナーは3部構成で行われ、第1講座では、栃木県・馬頭温泉の南平台温泉ホテル支配人の瀬尾和彦氏が登壇。「立地条件最悪」「地名度無し」「施設は老朽化」など、マイナス要素ばかりが目立つ同館が、3期連続で売上目標を達成できた秘策について講演を行った。 【松本 彩】

    南平台温泉ホテルは、1973(昭和48)年に、ゴルフ場経営を主体としている那須八溝物産の一部門として開業。2011年に那須八溝物産は民事再生手続きを行ったが、そのなかでも同ホテル自体は黒字経営を続けていた。同ホテルの本館が増築されたのが、今から32年前の1984(昭和59)年。そのあと1990(平成2)年に新館「緑水亭」がオープンするが、それ以降は増築や改修は一切行われていない。同ホテルがある馬頭温泉は、最寄り駅の氏家駅からも車で45分かかるなど、立地条件は最悪ともいえる環境だ。

    館内施設も恵まれているとは言い難い。館内通路の壁は、東日本大震災の影響により、剥がれ落ちて、継ぎ接ぎをしている状態の箇所もある。また、〝レトロ客室〟と呼ばれている1階と2階にある客室のうち、2階の客室にはトイレが完備されていない。さらに、エレベーターもないため、2階への移動は幅の狭い階段を使わなければならず、高齢の宿泊者からはクレームが上がることもあるという。

    ではなぜ、立地条件、知名度、施設状態ともに恵まれてはいない同ホテルが、3期連続で売上目標を達成することができたのか、そのカギは売上報告書や客室稼働率表などの活用にある。

    同ホテルは、宿泊業以外にも日帰り温泉施設「観音湯」、大衆演劇「みなみ座」を運営している。売上構成比は、ホテル部門で2億7千―8千万円、みなみ座と観音湯を合わせて1億円程度の売上がある。

    瀬尾氏は、日々の売上を売上報告書に入力するだけではなく、過去2年分の売上を、曜日や対目標値との比較を行い、宿泊プランの設定などを行っている。

    さらに、売上報告書以外にも客室別稼働率表を活用し、どの時期に稼働率が下がるのかを確認し、客室料金を上げるタイミングなどをはかっている。

    訳あり客室(レトロ客室)を逆手に取った宿泊プランの販売にも力を入れているほか、 2013年にはホームページとスマートフォンサイトをリニューアル。1日当たり200人程度のアクセスがあり、スマートフォンからの予約比率は約30%になっている。

    第2講座は、「立地・設備・人材難…変えられないデメリットを抱える中『おもてなし』の徹底で顧客満足度向上&集客増を実現させる法 大公開!」と題し、本紙でもコラムを連載中の井川今日子氏が講義を行った。井川氏は、スタッフ教育における生産性の向上について、接客のルールを定めたマニュアルを作成することの重要性を主張。「スタッフ研修のロールプレイングを見ていると、非常に無駄が多い。価値のない接客をするよりも、無駄を省き、お客様とよりコミュニケーションを取る方が大事」と語った。

    顧客評価が高い旅館スタッフを育てる方法の1つとしては、「自館に宿泊すること」を挙げ、「自館に泊まったことがないスタッフが驚くほど多い。自館のことを知らないと、お客様にPRすることは到底できない。お客様視点で自館を知ることは本当に重要」と強調。そのうえで、自館の料理・温泉・おもてなしなどを体感することで、さらなる気づきが生まれると伝えた。

    第3講座の「外部環境&内部環境に左右されず旅館を繁盛させる法 大公開!」では大坪氏が、ウェブ販促の視点から講義を行った。大坪氏は旅館が経営改善していくためには、“「誰」に「何」を「どうやって売るのか」”についてを見直す必要があるとし、「オンライン旅行会社(OTA)などが力を持ってきた現在、10年前と同じ広告の仕方では、集客は見込めない」と言及した。

    これらの現状を踏まえ、業績を定期的かつ効率的に上げる方法に、①売る経営体制の構築②売る「魅力的な商品」の構成③商品を売る「売場」の整理④無料でできるネット増倍策の実施⑤ネット広告――を提示。「自社ホームページの強化は必須で、なおかつスマートフォンサイトの構築も重要」と述べた。自社ホームページからの予約には特典を付けるなど、「自社ホームページに顧客を流入させる仕組みづくりをしていくことが、顧客確保のうえで必要になる」と参加者に呼びかけた。