• メディア掲載事例
    Media Publishing Case
  • 2020年6月21日 旅行新聞新社

    アフターコロナの観光 専門家21人が提言・メッセージ(1)

    難局をしなやかに乗り切る応用力を

    観光文化研究所 代表取締役
    大坪 敬史氏

     

    緊急事態宣言が解除されたからといって、コロナ禍以前の観光環境に戻るわけではありません。

    この状況下では、
    A:「自粛解除」と以前のような消費行動に戻る層
    B:恐る恐る自粛を解除する層
    C:この状況下で解除などケシカランという信念の元、自粛を続ける層
    に分かれてくるでしょう。

    そして、そのA/B/Cの比率は全国的にA<B≦Cとなり、都会に行くほどAに振れ、地方に行くほどCに振れるものと実感しております。
    ※エビデンスはありませんが、あくまで全国の旅館様から聞いた話を統合して類推したものです。
    ※地方に行けばいくほど、B≦Cではなく、C≦Bの箇所も多いかと思われます。

    非常時ですから、各個人さまざまな思想に基づいた消費行動がとられます。自粛警察などと称される層も一定数残ってくることでしょう。

    この状況下で我われが考えるべきことは、第一にCのお考えを持つお客様の「声」を断固として遮断するということです。

    飲食店や空いている旅館に、一方的に自分の正義を振りかざして行われる行動はいじめ体質と変わりませんし、犯罪に至るケースもあります。こういった方々の雑音や被害から働いているスタッフを守る、という行動こそ必要であり、その「声」に惑わされる必要はありません。

    第2にA層の取り込みです。

    ヤフーなどで「旅館 コロナ」と検索すると、関連ワード検索で「旅館 コロナウイルス 割引」と出てくるように、相当数がこの時期だから旅行に行きやすいはず! と思って上記のワードで検索されています。その行動は当然マスコミなどでは報道されませんが、「個人のリアルな思い」ということで我われに「光」を見せてくれる検索ワードでもあります。

    「あっ、やっぱりこんな時期でも旅行に行きたい層がいるのね」ということがわかるだけで、救われる思いをされる方も多いのではないでしょうか。

    そして最後にB層の取り込みです。

    この層は、「旅行に行きたいけど大丈夫かな」と思っておられます。ですので、館内の新型コロナ対策をどれほど詳細にホームページなどで掲載するかがポイントです。

    旅館業含め、宿泊産業は平時から厳しい「保健所」の指導を受けています。ですので、一般の飲食店よりは衛生対策をしっかりしている旅館様が多いかと思いますが、今回の事態を受け、衛生管理レベルの引き上げが必要になってきます。

    では、「どこまで」徹底しなければならないのか? ということですが、業界団体などの指針も出ていますが、それが永続的に続くかというとそうではありません。世情や新型コロナに対する医学的・疫学的アプローチの変更に伴い変化していくことでしょう。

    ガイドラインに沿った対策(衛生管理対策)も「決めたこと」が永続的に続くということではなく、日々変化・進化していく、ということになります。

    今まで旅館の清掃風景など、「裏の場面」をお客様にお見せするということはNGでしたが、いかに「誠実に清掃しているか」などという場面を見せることは現状において大きなプラスとなります。誰も「答え」を持ちえない新型コロナ対策ですが、少なくとも「今まで通り」の売り方ではお客様が予約しづらいことは間違いありません。

    難局をしなやかに乗り切る応用力が問われている時代、各施設様の現場の努力や改善から「新しい宿泊滞在スタイル」が確立されていくことでしょう。