• メディア掲載事例
    Media Publishing Case
  • 2020年6月21日 旅行新聞新社

    アフターコロナの観光 専門家21人が提言・メッセージ(2)

    適正単価を改めて見つめ直す
    観光文化研究所 おもてなしコンサルタント
    井川 今日子氏

     

    このコロナ禍、感染拡大防止が最優先され、不要・不急が代名詞の「観光」という余暇活動が制限・自粛要請される事態が続いています。市町村、都道府県内といった狭域観光を促す動きは宿泊助成金などのかたちで出てきていますが、広域さらには国を越えて以前のように自由に観光旅行ができるのは当面先になると予想されます。
    次回に持ち越せない「枠」(=座席、客室、体験など)を売るのが観光業界の特徴の1つですが、感染拡大防止のために3密を避けることを考えると、供給を6割程度に収める必要が生じます。供給が10割でき、それがすべて消費された場合(稼働率100%)と比較すると、単価は6―7割増にしないと元の売上が維持できないことが判りますし、基の稼働率を80%と考えた場合でも、単価は3割増にする必要があると試算できます。

    いまは少しでも売上を立てるべく、多少単価を下げてでもお客様にご利用いただくことも考えなければなりませんが、「Go Toキャンペーン」などを皮切りに、需要が戻ってきた段階では単価の向上を見据えていかねばなりません。
    昨年は訪日外国人客が3千万人を超えた一方で、2千万人を超える日本人も海外に出掛けました。そのなかで良く耳にするのが「日本の旅館は安すぎる」という声です。あれだけの料理と接客を提供しながらも、それが価格に反映されていないというものです。「安かろう、悪かろう」は当たり前だが、「安かろう、良かろう」は日本だけだなんて話も耳にしたことがあります。「Go Toトラベルキャンペーン」をターニングポイントとし、旅館側も消費者側も適正単価を改めて見つめ直す機会になればと考えています。
    単価の向上に比例して、おもてなしの量と質の向上が求められるは言うまでもありません。しかしながら、3密回避が前提となるため、多くの場面でこれまで通りのおもてなしが提供できなくなることが想定されます。おもてなしは対面に限ったものではありません。工夫次第ではオンラインを活用したおもてなしも提供できます。何となく取り入れて形骸化していた接客スタイルを見つめ直す良いチャンスです。ニューノーマルの世界で通用する新たなおもてなしをデザインすることが求められています。
    新型コロナウイルスがもたらす未曾有の困難に直面していますが、この危機を契機と捉えて行動することこそが未来を切り拓いていくと確信しています。